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7.2 21世紀の海洋利用への提言

 

本調査では、21世紀を迎えるに当たって、海洋のより高度な利用を図って行くために、海洋資源・エネルギー分野、地球環境保全分野及び海洋観測・調査分野など海洋の分野全般について、「海」の果たす役割及び人類の手によって利用・活用できる領域を調査研究し、内外の先端技術の調査結果と海洋の利用ニーズの調査結果から、21世紀の海洋利用のあり方および有望なテーマ群の検討を行った。今回の調査検討全体を通じて、本調査研究のタイトルともなっている「横断的」ということに関して、以下の3つの視点が重要であることを改めて痛感した。21世紀の海洋利用を考える上で極めて重要な視点を提示していると言える。

 

(1) 横断的視点その1:学際的な視点

 

本文中でも再三述べたように、本調査研究の最大の特徴は、「海洋」を専門に扱っている研究者のみならず、「流体物理」、「電子・機械工学」、「化学エネルギー」、「文化論」などの専門家も交えて、まさに分野横断的な視点から21世紀の海洋を捉えようとしたことである。結果として、海の専門家だけでは取り上げられなかった新たなアイディアも提示された。このような分野横断的な研究者の組織化は、今後の新しい海洋プロジェクトを進める際にも決して忘れてはならない視点である。

近年、分野横断的な研究会や審議会がいくつかスタートしつつあるが、本調査研究委員会が先陣を切って議論したことの意味は大きい。また、次の視点にもつながるが、省庁が開催するこのような委員会ではどうしても当該省庁の枠を抜けるという発想には立っていない。本調査がフリーハンドで自由に議論できたことの意義も大きい。

 

(2) 横断的視点その2:省庁横断的な視点

 

海洋は、地球の約70%を占め、エネルギー資源、地球温暖化、砂漠化、環境汚染の拡大、世界人口増などの地球的規模の問題解決に向けて大きな期待が寄せられている。このためには、海を総合的に捉え、一つのの社会システムとしての統合的な取り組みが求められている。しかしながら、我が国の取り組みをみると、本文中でも示したように、海洋関連研究は省庁ごとにテーマが区分けされる傾向にある。このため、分野横断的なテーマの実施がほとんどないという現実に突き当たる。運輸省、科学技術庁、農林水産省、通商産業省、環境庁などが、それぞれの所掌において、実行しているのが現状である。このため、地球環境問題や資源、エネルギーに関連した分野では、規模があまりにも大きすぎたり省庁の利害が絡んだりもして、研究の力点が基礎研究に重点が置かれており、重要テーマにも関わらず応用研究が少ないという状況にある。

 

 

 

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