日本財団 図書館


6.2.7 トータルシステムとしての海洋環境管理

 

(1) 構想の概要

 

21世紀には、人類の人口が100億人に達するとの予測がある。人口が増えるに従い、居住地や産業の場が、より海洋に接する部分が多くなることが予測される。このため、台風や津波などの海の災害が我々に甚大な被害をもたらすことが懸念される。これを回避するためには、単に海洋環境をモニターするだけではなく、海洋環境、海況情報の常時取得とリアルタイム配信の実現により、詳細な観測データに基づいた海洋および気候変動に関する予測とそれを利用した社会へのフィードバックシステム(環境改善など)を確立し、環境破壊や災害などを最小限に回避する社会の実現を目指すことが強く望まれる。

我が国では、立地上、地震災害などの対策が急務であり、また海洋国家としての真の確立を目指すためにも「トータルシステムとしての海洋環境管理」が必要である。

 

(2) 必要な技術要素

 

「トータルシステムとしての海洋環境管理」を実現するためには、要素技術としては、下記の開発が求められる。

・海洋観測技術(海洋観測衛星、音響トモグラフィーなど)の向上

・海洋・気候モデルの確立(予測技術)

・観測技術と画像処理技術などの異種技術間の融合

・海中音響通信

第3章で述べたように、これらの要素技術については、我が国には多くの開発実績がある。たとえば、音響トモグラフィーや衛星の利用技術では世界をリードしており、近年、気候変動モデルの大規模な開発計画に着手している(地球フロンテイア計画)。

しかしながら、これらの結果を防災まで含めた「トータル社会システム」までつなげようとする発想には乏しい。これは、海洋の観測は科学技術庁、気候予測は運輸省(気象庁)、基礎研究は文部省、防災は国土庁といった縦割りの壁が存在することが原因と考えられる。この分野の確立のためには、個々の技術開発を実施するというよりも、横断的な政策システムの構築が求められている。また、この構想を実現するためには、単に我が国のみにとどまらず国際協力の枠組みを構築して実行に移すことが現実的である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION