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係留に関しては、係留ラインの重量低減の観点から、合成繊維ロープの使用が注目されている。また、観測用の大型プラットフォームとしては、平成5年度から3年間で行われた「海洋における炭素循環自動観測システムに関する調査研究」において、全長43mで、全幅30mの大型ブイロボットが試設計されている。このブイロボットでの消費電力は、毎時12kWhと見積もられており、太陽電池その他の高性能の発電装置の開発が待たれている。

 

2] 観測ブイ

海洋観測のためのブイは、これまでにも多く開発されている。代表的なものとしては、海面ブイ係留システムとして米国PMELが開発したATLASブイや海洋科学技術センターが開発したTRITONブイなどである。TRITONブイでは、CTD(電気伝導度・水温・深度センサー)に加えて、流速センサーが観測センサーとして取り付けられている。得られたデータは係留索を介してブイに送られ、ブイに取り付けられた風速・風向・日射・相対湿度・気温・雨量・気圧センサーのデータとともにアルゴス衛生データ通信システムによって衛星中継され、リアルタイムで陸上に送り出されている。

 

3] AUV

3.2の「海洋ロボット」の項で述べたように、現在、国内外において多くのAUVが開発されている。また、AUVではないが、高速で移動しながら海洋中の流速・水温・塩分・溶存炭酸・濁度・クロロフィル・pHを同時に実時間で計測可能な高速曳航式海洋物理・観測ロボット「FLYING FISH」が開発されている。これらの技術の組み合わせにより、本構想でのブイ間を観測しながらつなぐAUVが可能になると考えられる。

 

(5) 今後の技術課題

 

本構想は、(2)項で挙げた技術の統合で可能と考えられるが、各技術において1つの問題となるのが、長期間で多くの機能を実現するため電力の問題である。これらに関しては、太陽エネルギー、波力発電などによる再生可能エネルギーを活用することができると考えられ、個々のエネルギー創成技術の高度化およびそれらの複合的な利用が望まれる。また、観測を充実させるために、要素技術としてのセンサーの高度化、多機能化が必要である。

 

[参考文献]

・(社)日本造船学会海中システム部会編「海中技術一般(改訂版)」成山堂書店(1999).

・小寺山亘、“海洋開発の最新技術と開発動向 海洋計測技術と海洋工学”、33、105(1998).

 

 

 

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