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6.2.4 海を通して地球環境を守る

 

(1) 構想の概要

 

大気中のCO2濃度の増加に対して、海を利用してCO2を固定する方法が考案されている。それらは、人工的にCO2を海洋に処分する方法と生物活動によりCO2を固定する方法に大別される。CO2の海洋処分では、発電所等から発生するCO2を回収し、液体CO2あるいは溶存CO2として海洋に隔離することにより、大気へのCO2の散逸を数100〜1000年のオーダーで遅らせることが可能である。これに対して、生物活動を利用したCO2固定は、天然の力をそのまま利用するという点で環境に与える影響も少ないと考えられる。

 

(2) 海洋新技術の意義

 

現在深刻な問題となりつつある地球温暖化に対しては、人為的なCO2の排出を抑制することが最も重要である。しかしながら、アジア、アフリカ地域の工業化に伴い、今後も著しい量のCO2排出が見込まれており、その意味では排出されたCO2の大気中への拡散を防止する手段を講じることが有効となる。そのような場合に、地球の約7割の表面積をもつ海洋をCO2の吸収源として選択することは、合理的かつ効果的な方法であると考えられる。

 

(3) 海洋新技術の内容

 

1] CO2の海洋処分

a. 中層域へのCO2放流

海洋中層放流は、CO2を投入地点において積極的に海水に溶解させる溶解型隔離方式である。CO2を放出する深度としては、放出したCO2が速やかに希釈され海底等への影響が出ない点と、海水中に希釈されたCO2が短期間のうちに大気中に放出されない点を考慮に入れる必要がある。水深3000m以深に放流された液体CO2は周囲の海水より重く、深海底にCO2の溜まりが形成される。さらに、海洋表層に近い領域では、海水は充分に混合されており、海水と大気のCO2交換が活発に行われるため、直ちに放流したCO2が大気中に拡散していく可能性がある。そのため、CO2を放流する深度としては水深1000〜2000mの中層領域が適当である。

 

 

 

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