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5.2 21世紀の諸問題を解決する場としての海洋の利用ニーズ

 

21世紀には、二酸化炭素放出による地球温暖化の間題や化石燃料の枯渇、人口の爆発的増加による食糧問題など、地球規模での問題が一層顕在化してくることが予想される。これらの諸問題に対して、地球の70%の面積を有する海洋の環境や資源、空間を利用して解決しようとするのが、本調査研究の基本的なモティベーションであった。表5.2-1には、21世紀の諸問題を解決する場としての海洋の利用ニーズをとりまとめた。本カテゴリーは海洋の「社会的ニーズ」に対応している。

 

5.2.1 人ロの増加

 

前述のように、21世紀半ばには人口が100億人に達すると言われ、食糧、特にタンパク源を何に求めるかは極めて深刻な問題である。我が国は四方を海に囲まれ、また広大な経済水域を有していることから、安定な漁場の構築が実現できれば、今以上にタンパク源を海に求められるようになる。このためには、新たな海の利用として、遠洋の深層水を利用した広大な静穏域の創出とこれによるバリアフリー漁場の構築などの利用が考えられる(現状では、深層水の利用は沿岸域を中心に行われている)。また、沿岸域の利用に対しては、環境保全も水産資源を確保するためには有用であり、環境に配慮した新たな人工浅海養殖システムの実現などが求められる。一方、水産資源の正確な把握も国際協議を含めた資源獲得の場においては重要であり、魚の回遊挙動や、広域プラットフォームを利用した観測なども求められている。

 

5.2.2 資源エネルギーの枯渇

 

21世紀における人口増加や産業の発展に伴って持続的発展を遂げるためには、地球環境を保全しつつクリーンな資源エネルギーの安定的な確保が急がれる。海洋は全地球の7割を占めているが、現状では、潮汐発電などの発電実績はあるものの、地球的な規模でみるとエネルギー生産は極めて少ないと言える。逆な言い方をすれば、海洋は未利用エネルギーの宝庫である。海洋はその物理特性を利用した温度差発電、濃度差発電、潮流発源などが可能であり、自然エネルギー獲得のポテンシャルははかり知れないものがある。我が国では、海のエネルギー利用に係わるプロジェクトは大きなものは少なく細々と続いているという状況である。

 

 

 

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