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養浜とヘッドランドの設置を通して、安定な海浜を生み出すことにより、人工海浜の造成が可能となる。人工島周囲の護岸のために、安定海浜工法が適用されている。

 

c. 干潟造成

一般に、干潟とは、潮汐の干満周期により露出と水没のサイクルを繰り返す平坦な地帯を指している。干潟は、気温調整注2)、微細藻類や湿性植物による光合成、水域浄化、生物生産、レクレーション等の多岐にわたる機能を有している。埋め立てや護岸改修により天然の干潟が消失していく一方で、内湾の海岸線に山砂などを使用して、人工的な干潟の造成が進められている。人工干潟の造成は、海浜、養浜、漁場造成を含めると、これまでに運輸省、水産庁、建設省が中心となって港湾・海岸環境整備事業、海域環境創造事業、沿岸漁場整備開発事業等の中で全国的に実施されている。

 

d. 藻場造成

海藻類の生育や分布に影響する諸要因として、光、付着基質、温度、塩分、汚染、水の動き、藻食動物による食害などが挙げられている。これらの要因の中で、現在の海岸工学の技術により海藻の生育に適した環境を創造できるものは、水深、基質の大きさや硬さ、海底の砂の動き、海藻に作用する波力などである。これに関して、砂地海底に安定な人工基盤を設置するのみで藻場が造られ維持される、自然を模倣した藻場造成技術の開発が進められている。

三浦半島西岸のアラメ・カジメ場に対する藻場造成に対して、基盤の表面形状の工夫から、目的の海藻の生残と成長により効果的な逆台形の突起物が付けられている。基盤の設置3年後において濃密なアラメ・カジメ場が造られている。コンブ場については、基盤がときどき砂に埋まったり、転がったりしてコンブの着生面が更新されるような、微妙な不安定性を有するものの方が良いようであり、管理のための様々な工夫が必要となってくる。

注2)春から初夏にかけては、熱吸収の良い干出した砂泥質の浜は、太陽光により周囲の気温・水温よりも5〜10℃も上昇し、それが冠水によって高温水域を形成し、周辺の気温上昇が生じる。

盛夏には、干出し湿潤した広い浜では太陽光の輻射によって蒸発散が盛んに行われ、大気の循環が起こり、浜風による涼しさが生み出される。

 

 

 

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