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5-3. 高温高圧容器を用いた廃食用油の燃焼試験

廃食用油は軽油燃料に比べて極めて粘度が高いのでディーゼル燃料として用いる場合、燃料噴霧の粒径が大きくなるので、燃焼室内での噴霧の気化性が悪化し空気との分子レベルでの混合が悪くなり

1]すすの生成増加や浮遊微粒子(PM)の増加

2]燃料の燃焼反応が空気との混合速度に律束され燃焼速度が遅延することおよび燃焼割合の低下に起因する燃費の悪化、

3]燃料噴霧内の等量比分布が大きくなり局所的な低等量比領域においてNOxの発生増加が生じると予測される。

燃焼室周りを遮熱したエンジンでは燃焼室内壁面温度が高くなるので燃焼室内で圧縮される吸入空気は高温の壁面より受熱し、圧縮終わりでの空気温度が通常の冷却系を持つエンジンに比べ250K以上高くなる。この高温雰囲気を利用して廃食用油の噴霧粒子の気化を進め、空気との混合を促進することが重要な技術となる。

燃焼室内空気の圧縮終わりと同じ高圧条件で空気の温度を変えた雰囲気中に、選定した噴射系を用いて廃食用油を噴射し、噴霧の拡散、空気との混合、着火の時期、燃焼のプロセスを観察することで、廃食用油の気化混合が促進し、確実に圧縮着火して燃えきる条件を調査し、試作するエンジンの遮熱構造を設計するための情報を得た。

 

5-3-1. 試験装置と試験条件

図-1に試験に用いた燃焼観察装置の概要を、図-2に高温高圧容器の仕様を示す。表-5に試験条件を示す。

使用した高温高圧容器は内径420mm、長さ640mmで燃料噴霧に対して十分大きい。従って噴射ポンプを用いて容器内部に噴射された燃料の燃焼は一定圧力下の燃焼とみなせる。容器内の空気は電気ヒーターにより加熱されている。加熱された空気は自然対流により容器内で温度差を生じる。その温度差は容器内の上下位置でほぼ100Kである。噴射ノズルの近傍に設置された熱電対の温度で内部の空気温度値を代表させた。容器の観察窓は直径190mmの石英ガラス製で自由噴霧の観察範囲としては充分な視野を確保している。シャドーグラフの光源には平均出力10Wで連続パルスが可能なNEC製の銅蒸気レーザーを用いた。パルス幅は約25nsecである。レーザー光は焦点距離2m、直径200mmの凹面鏡を用いて200mmの平行なビームとした。銅蒸気レーザーの発光は高速カメラに同期している。使用した高速カメラはNAC製E-10であり、撮影速度は10,000コマ/秒である。燃料噴射量の調整は、噴射ノズルを高温高圧容器に取り付ける前に規定のポンプ回転速度(750rpm)で大気中に燃料を噴射させ、13.5mm3/stの噴射量を得た時の噴射ポンプのレバーの位置を固定する方法で行った。容器内が試験条件の温度に達するまでに噴射ノズルとノズル内の燃料が過熱されることを防ぐため、噴射ノズルは外部より水で冷却している。高速カメラを始動しフィルムスピードが10,000コマ/秒に安定した後、5〜6回の燃料噴射を行い、観察には最後の映像を用いた。

 

 

 

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