日本財団 図書館


9. 融解過程

氷上の融け水の溜まりをパドル(Puddle)という。主として積雪の融け水であるが、さらに進んだ段階では氷自身の融け水が加わる。初期の段階では融雪の斑点ができる。パドルが大きくなって下の海水まで突き抜けた海氷中の垂直な穴を底なしパドル(Thaw holes)と呼ぶ。クラックや底なしパドルができて、溜まっていた融け水が表面から流れ去ったあとの氷をかわき水(Dried ice)といい、乾燥している間は氷表面が青みがかって見える。崩壊が更に進むと穴が無数にあいた海氷となり、はちの巣氷(Rotten ice)と呼ばれる。氷上積雪に融け水や河の水がしみ込んで重くなった雪の載った海氷を浸水氷(Flooded ice)という。

 

10. 陸氷(Ice of land origin)

古い雪が再結晶して高密度となっている雪をフィルン(Firn)という。雪と異なり氷粒がくっつきあって一体化しているが、氷とも違って中の空隙はまだ互いに連結していて通気性がある。

高所から低い方へと常に動いている雪と氷の塊を氷河(Glacier)という。氷河の主な形態は、氷床(Ice sheet)、棚氷(Ice shelf)、氷帽あるいは氷冠(Ice cap)、山麓氷河(Ice piedmont)、氷河流(Ice stream)、圏谷氷河(Cirque glacier)、山岳氷河(Mountain glacier)などに分けられる。

氷河の氷を氷河氷(Glacier ice)という。陸上にあるか、氷河舌、氷山、氷山片、氷岩などとなって海に浮いているかは問わない。氷河が海に向かって張り出している部分を氷河舌(Glaciertongue)という。通常は浮いている姿であり、南極の氷河舌には数10kmを超える長さのものがある。海岸から張り出して座礁したり定着氷で連結されていたりする氷山群の大集合域は氷山舌(Iceberg tongue)と呼ばれる。

海面上の高さが2〜50mまたはそれ以上で、海岸に固着し浮いている氷床を棚氷(Ice shelf)と呼び、普通水平方向に大きく広がり、表面は平たんかゆるやかな起伏をしている。棚氷または浮いている氷河の海側の面が垂直の壁を形成しているところが浮氷壁(Ice front)で、高さは海面上2mから50m以上にも及ぶ。海上に浮かんでいない座礁した氷河で海に面した縁が壁状になっている場合は氷河壁(Ice wall)という。氷河壁、浮氷壁または氷山から氷塊が割れて離れることを分離(Calving)という。

氷河から分離した海面上5m以上の氷塊を氷山(Iceberg)といい、浮いているものと座礁しているものとがある。氷山は形状によって卓状型、ドーム型、傾斜型、尖塔型、風化型、または不規則な形をした氷河氷山(Glacier berg)などに分けられる。北極海の棚氷が割れた海面上の高さが5m以上の大きな浮氷は水島(Ice island)と名付けられ、厚さは30〜50m、面積は数千m2〜500km2またはそれ以上に達する。海面上の高さが5m以下1m以上で、面積が約100〜300m2の氷河氷の大破片を氷山片(Bergy bit)、海面上の高さが1m以下で面積が20m2程度の小さな氷塊は氷岩(Growler)と呼ばれている。

 

11. 大気中の現象

低い雲の下面での反射を利用して遠方にある氷や海水面の情報が得られる。暗い縞は海氷域付近に海水面があることを示すので水空(Water sky)と呼ばれ、明るい輝きは氷の存在を示すので氷映(Ice blink)と呼ばれる。冬季の海氷域に生じた開水面や氷縁の風下の比較的暖かい水面に寒気が接して生じた霧状の雲は水煙(Frosts moke)と名付けられ、氷が張って水面が塞がるまで持続する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION