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風や海流の作用によって、氷縁が数kmの長さに張り出したものを氷舌(Tongue)、氷縁の中に三日月状に広く入り込んだ部分を入江(Bight)と呼ぶ。

海氷と開水面とが時々刻々につくる様々の形の境界を氷縁(Ice edge)という。定着しているか漂流しているかを問わない。定着氷と開水面との境界は定着氷の氷縁(Fast-ice edge)という。定着氷と流氷の境界は定着氷境界(Fast-ice boundary)、明らかに異なる氷量の二つの流氷域の境界は氷量境界(Concentration boundary)と呼び、両者をまとめて氷域境界(Ice boundary)ということがある。通常流氷域の風上側にでき、風や海流で圧縮された明瞭な氷縁を密氷縁(Compact ice edge)、通常流氷域の風下側にでき、氷が分散して境界が明瞭でない氷縁を緩氷縁(Diffuse ice edge)という。

多年にわたる観測に基づき、ある特定月や期間における氷縁の平均位置を平均氷縁(Mean ice edge)という。最大平均氷縁、最小平均氷縁という用語もある。多年の観測期間中の最大最少氷縁位置を氷限(Ice limit)と呼ぶ。特定月、特定期間、最小、最大などを付けて、気候学的用語として用いる。

 

5. 流氷の運動作用(Pack-ice motion processes)

氷野や氷盤群が発散状況下にあることを分散(Diverging)といい、氷量が減少し、圧迫がゆるむ。それに対し、収束状況下にあることを密集(Compacting)といい、氷量が増加し、圧迫が起こって変形をもたらす。氷が回転力を受け、動きに直角な方向に変形が現れる場合、流氷域がずれ(Shearing)の運動を受けているという。

 

6. 変形作用(Deformation processes)

圧迫により破壊し裂け目などを生ずることを破砕(Fracturing)、氷丘ができるような圧迫作用を氷丘化(Hummocking)、氷丘脈を作るような圧迫作用を氷脈化(Ridging)という。圧力を受けて新成氷や板状軟氷が互いに重なり合うことをのしあがり(Rafting)といい、指を交互に上下させて組むような状態ののしあがりをゆび状組合わせ(Finger rafting)という。氷表面の起伏をしだいに消してゆくような削剥と蓄積の作用を風化(Weathering)と呼んでいる。

 

7. 氷域中の海水面

変形作用の結果、密流氷域や定着氷、または単独の氷盤に走る裂け目を割れ目(Fracture)という。割れ目には砕け氷があったり、ニラスや板状軟氷が張りつめていることもある。長さは数mから数kmに及ぶものもある。氷を互いに分離させるに至らない数cmから1mの幅の亀裂をクラック(Crack)といい、動かない氷脚あるいは氷河壁と定着氷との間のクランクを、タイド・クラック(Tide crack)という。タイド・クラックの沖側の定着氷は潮汐によって上下する。

流氷と定着氷との間の狭い分離帯をフロー(Flaw)という。強い風や海流によって定着氷境界に沿って流氷が切り取られてでき、その中は氷片が混乱した状態になっている。割れ目は、その幅によって、1〜50mの極小割れ目(Very small fracture)、50〜200mの小割れ目(Small fracture)、200〜500mの中割れ目(Medium fracture)、500mを超える大割れ目(Large fracture)に分類される。割れ目が多数あるところを割れ目域(Fracture zone)という。

 

 

 

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