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北極海航路?東アジアとヨーロッパを結ぶ最短の海の道?

 事業名 北極海航路開発調査研究
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


INSROPでは、これらの点についての検討が不充分であり、海上輸送物資を如何に効率よく宅配するかを十分検討した上でのNSR港湾のあり方が問われるべきである。陸、海、空の輸送路は、競合すべきものではなく、それぞれの特徴を生かした輸送の分担が行われるべきであり、今後、NSRを含めた複合輸送システムが検討されねばならないが、この問題は必然的にNSR海上輸送貨物のコンテナー化を示唆するものとなる。

 

政治力によってNSRを啓開することは可能であるが、物流を欠いて海運が健全に育つ可能性はなく、形式上、国際法上、国際的に開かれた航路であっても、実態は国内航路でしかあり得ない。そのためには、何よりも先ずロシア経済の立て直し、あるいは諸外国に理解し得る、かつ信頼に足る経済復興のシナリオの提示が急務である。なお、INSROPで検討された経済資料は、必ずしもロシア経済の実態を表していないことに留意する必要がある。第三国経由による輸出入量を含めると、かなりの物流量となり、政府公表資料と一見矛盾するロシア市民中間層の増大や市民生活の向上傾向がこれを裏付けている。

また、北欧諸国やヨーロッパ・ロシア地域からの極東アジアへの輸送のシナリオでは、少なくともアンダライターが納得し得る水準でのNSR関連インフラストラクチャー整備、維持に必要とする物流量を想定することはできない。NSR啓開の現実的なシナリオがNSR完航輸送ではなく、様々なローカル・ルートの複合システムとして成り立つものであるのなら、世界最大の資源国であるロシアNSR沿いに賦存する様々な天然資源開発計画を長期展望の上で合理的なものとすることが必要であり、このような計画的な資源開発に則って行われる開発資源の海上輸送計画のみが、当面NSRを現実の通年商業航路として啓開させ得る可能性を持っている。

 

6.3.2 社会・政治・法制

NSR啓開の条件の一つとして、政治体制の安定が挙げられる。これは、単に大統領を頂点とする政府首脳部についてばかりでなく、行政組識についても意味合は若干異なるが同様である。行政機関同士の利権・管轄権争いは、何もロシアに限ったことではないが、開発に伴う環境保護に関る問題等で、しばしば深刻な問題を惹起するからである。折々の曲折はともかく、近い将来に向けての確かな方向が見受けられれば、諸外国の関心を集め、投資の可能性も生まれる。

海洋法に関る問題もある。海峡の無害通航権や排他的経済水域内の通航、強制航行支援の国際法上の論拠などである。しかし問題の大半は、ロシア固有の問題ではなく、むしろ、慣習法と大国のエゴが根底にあっての問題であり、国連等の場で、論議と調整を繰り返しつつ、国際合意に至る問題であろう。いずれせよ、ロシアのNSR通航関係法制が国際的に妥当か否かは、海運市場原理が判定してくれる筈である。

 

(1) 先住民族

NSR沿いには、多数の先住少数民族の生活がある。

ロシアのシベリア進出は16世紀に遡る。17世紀には、既にヤクート、ツングースがロシア統治化に置かれ、ロシア人による東北シベリア征服、アムール川への到達、中露国境の設定など、ロシア人の活躍が活発となる。シベリアの先住民族は、16世紀のロシア人の侵入以来、ロシア帝国時代の非人道的な扱い、ロシア革命後では、大規模なシベリア植民政策、流刑人、政治犯の扱いなど、ロシア人中心の政策によって、中央政府の立法措置による先住民族保護政策とは裏腹に、有形無形の迫害を受け続けてきた。長年にわたるロシアの植民地化および国境地域での中国の植民地化が先住民族に与えた影響は、既に修復し難いレベルに達している。

 

 

 

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