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その他に、船体に取り付けたビデオカメラの映像を画像処理することによる氷密接度・氷厚の計測も行い、上記目視観測の結果と比較・検討した。

 

(4) ノルウェーのNERSC(ナンセン環境・リモートセンシングセンター)との緊密な連絡により、同研究所から2種類の衛星氷況データを、航海中、継続的に取得した。1つはヨーロッパの資源探査衛星ERS-1のSAR(合成開口レーダー)による画像である。これは、空間解像度は高いものの、幅わずか100kmの狭い範囲しか見られない。その例を図5.7に示す。もう一つは、NOAA(米国海洋大気庁)からNERSCのデータ処理・経由で取得したSSM/I(Special Sensor Microwave Imager)画像である。これは、解像度は低いものの、広範囲なデータが得られる。これらの氷況画像は、通信衛星インマルサット経由のFAX受信の他に、同回線を用いたコンピュータ通信によって、高品質の原画像を入手した。これら衛星氷況画像の撮影位置を図5.8、5.9に示す。なお、現在ではカナダの打ち上げによるRADARSATが稼動しており、それに搭載されているSARセンサは、最大観測幅500kmになり、大変有効と思われるが、現在の所、画像が極めて高価なのが欠点である。

上記の他に、ロシアのペベク、ディクソンにある航行官制所から、2種類の氷況情報を入手した。一つは、ペベクからテレックスにて入手した航空観測による数値データ表であり、調査団のロシア人専門家により、アイスマップに加工した。もう一つは、ディクソンから入手したロシアの観測衛星OKEAN-1のデータを基にした手描きのアイスマップである。

 

(5) 上記氷況データを基に、航路についての議論と決定を行った。本航海においては、通常より北寄りの航路を採ったため、残念ながら、SAR画像は航路決定に殆ど役立たなかった。これは、SAR画像の撮影位置と時刻を何カ月も前に指定しておかなければならないという事情による。一方、SSM/I画像とロシア側アイスマップは大変役に立ち、セベルナヤゼムリヤ群島北の北極岬単独通過の快挙の主要因となった。また、これらのデータから、船が実際に遭遇する将来の氷況を予測するのも大変重要である。本航海の場合、調査団中のロシア人研究者と本船船長の予測は大変有効であった。将来、この様な経験的な予測に、コンピュータによる数値予測を加味すれば、効率的かつ正確な予測に繋がるものと期待される。

 

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図5.7 SAR衛星氷況画像の例

(ウランゲル島南西、1995年8月17日)

 

 

 

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