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図4.2-3 定着氷

 

すなわち、第3章に述べたように、これらの海域は、沖合いまで大陸棚が発達した浅水域であり、また、オビ、エニセイ、レナといった大河から大量の河川水が流入する。このため、表層海水の塩分濃度が低く、海氷の発達しやすい状態となっている。これに対し、チュクチ海から東シベリア海東部にかけての海域は、このような条件があまり整っていないことに加え、ベーリング海峡を通じての北太平洋からの海水の流入の影響も受けて、定着氷の発達は大陸沿岸の狭い領域に限られている。

この一方、冬期に発達する定着氷の外縁にはポリニヤの発達が見られる(図4.2-3)。定着氷と北極点を中心とする氷野との間に線上に存在するフローポリニヤ(flaw polynya)は、冬季NSRにおける船舶航行のための航路として利用される。なお、バレンツ海には広大な無氷域が存在するが、これは、温暖なメキシコ湾流の影響によるものである。

氷の広がりとともに、船舶の航行に影響を与えるパラメーターは、氷厚である。一年氷は、一般に、冬期初期に成長を始め、月の経過とともに徐々にその成長速度を低下させながら、冬期終わりに最大氷厚に達する。図4.2-4に一年氷の成長の様子を示す。同図に示したデータは、各海域における平坦氷の成長率から各月の月末における氷厚を計算したものである。海氷の成長は海域により異なる。NSRの中央部のラプテフ海東部及び東シベリア海西部では最も氷の成長が顕著であり、5月末における氷厚は2mを超える。これに対しNSRの東西両端域では氷の成長は比較的穏やかである。

 

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図4.2-4 冬期における海氷の成長

 

 

 

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