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北極海航路?東アジアとヨーロッパを結ぶ最短の海の道?

 事業名 北極海航路開発調査研究
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


4. 北極海航路の運航技術

 

4.1 氷海船舶

 

NSRの最大の特徴は、航路上における氷の存在である。氷は船舶の前進を妨げ船速低下を引き起こす大きな障害であるとともに、時には船体あるいは推進器等に損傷を与える危険な存在でもある。このような氷の存在する海域、氷海域を航行する目的を持って建造される船舶を氷海船舶と呼ぶ。氷海船舶は水中を安全かつ効率的に航行するために、他の船舶には無い特徴を有する特殊な船舶でなければならない。本節においては、まず、氷海船舶の一般的特徴並びにこれに関わる規則等を述べる。次に、氷海船舶の具体的な例としてロシアの氷海船舶について概説する。ロシアは世界最大の氷海船舶保有国であり、NSRにおける運航を通して氷海域における航行の経験が豊富である。最後に氷海船舶の研究・開発について述べる。ここでは近年開発された氷海船舶の船型を概観するとともに、NSR用商船の船型開発プロジェクトについて述べる。

 

4.1.1 氷海船舶の満たすべき要件

 

(1) 一般的特徴

氷荷重に耐える船体

氷海中における船舶の船体には、周囲の氷との接触により船体に加わる力、氷荷重が発生する。氷荷重は、時に船体あるいは付加物に損傷を与え、最悪の場合には沈船に至る致命的損傷を引き起こすものとなり得る。氷荷重に耐えて乗員並びに積載貨物を護り安全に航海するために、氷海船舶の船体は頑強に造られるとともに、氷荷重を軽減するための工夫が為されている。

16世紀から17世紀にロシア白海沿岸において、氷海域用の舟としてkoch及びlod'yaと呼ばれる舟が製作されている。これらの舟は長さ18m、乗員30名程度の大きさであり、全体的に丸みを帯びた船体形状を有していた。このため、氷の中に閉じ込められて動きがとれなくなった場合においても、周囲の氷から船体に働く力により船体が氷上に持ち上げられて破壊を免れたことが記録されている(WP-28)。このような丸みを帯びた船体形状は、必ずしも氷からの力に対して船体を護ろうとする発想に基づくものではなく、当時の造船過程における技術的制約によるものであったが、このアイディアは、後年、Fridtjof Nansenの依頼によりColin Archerが設計した極地観測船フラム号にも反映さることとなった(図4.1-1)。フラム号の船体中央断面はほぼ半円形の形状を有するとともに、船首・船尾ともに丸みを帯びた形状となっている。

丸みを帯びた船体により氷荷重を軽減しようとする考え方は、鋼船の時代にもしばらくの間受け継がれた。昭和40年に建造されたわが国の南極観測船「ふじ」もほぼ半円形の中央断面を有している。一方、「ふじ」の後継船として昭和57年に建造された「しらせ」は、丸みは無いものの多少傾斜した船体側面となっている(図4.1-2)。これは、氷中に閉じ込められるビセット状態において、船側に押し寄せる氷が圧縮ではなく曲げにより破壊されることにより、船体にかかる氷荷重の軽減を図るものである。氷荷重並びにこれに対応した船体構造に関する知見・技術は進展しているものの、船舶にとって氷荷重が大きな脅威であることには変わりはない。

 

 

 

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