日本財団 図書館


本シンポジウムのセッションは、特別セッションの日米共同のサンゴ礁研究ミッションと以下の4セッション:“サンゴの生物学”、“サンゴ礁生態系の動態”、“沿岸生態系の動態”、“人類の生存とサンゴ礁の関わり”をテーマとして、日本から15件、海外から18件の発表がなされた。約2/3の発表は英語で行われたが、同時通訳により一般参加者にも発表内容がかなり理解されたものと思われる。

特別セッションでは、米国ニューイングランド水族館のGregory Stone氏により“日米共同のサンゴ礁研究ミッション”との演題名で、米国フロリダのキーラルゴ沖に設置された海底研究室と、飽和潜水技術を用いた浅海生態系研究が紹介された。浅海の生態系調査において、海中滞在時間や減圧の問題を心配する必要がなく、さらに夜間にも自由に調査研究が可能な上記手法の有用性が報告された。

セッション-Iのテーマは、“サンゴの生物学”で、豪州のグレートバリアリーフにおけるサンゴ研究では、サンゴの白化を発生させる水温閾値が31.8℃との、かなり明確な数値が示された。また日本からは、北国の陸奥湾に生息する非常に小型で稀少なサンゴの生態や、沖縄近海における珊瑚の天敵等に関する研究など6題が報告された。

セッション-IIのテーマは、“サンゴ礁生態系の動態”で、サンゴを生物量としてとらえ、環境との関連等が報告された。また各研究者が採用している計測技法やサンゴと魚などの他の生物との関連、さらに一旦減少したサンゴの生物量が如何に回復するか、また推測されるその回復機序など10題の報告があった。

セッション-IIIのテーマは、“沿岸生態系の動態”で、サンゴ礁生態系のほか海草、海藻やタイ湾におけるサンゴに穴を開ける貝類などの関連生物も含めた研究など7題が報告された。

セッション-IVのテーマは“人類の生存とサンゴ礁の関わり”で、サンゴ礁生態系と漁業のかかわり、人類がサンゴと共存していくための課題、また今後の地球温暖化により、サンゴはいかに変化してゆくのか、など9題が報告された。

今回のシンポジウムでは、広範囲のサンゴが短期間の環境変化に大きく影響されることが強く認識され、サンゴの生態を地球環境指標とする場合の国際協力の必要性と、さらに測定法の統一を含む指標の統一が提案された。今後は各国で開催されるであろうサンゴ関連の会議等の呼びかけを広く行うなど、より強いサンゴ研究の国際協力ネットワークの必要性が再認識された。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION