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7. ナビゲーションの精度

テセウスのナビゲーションの誤差は測位を更新するトランスポンダの地点で決定することができる。こうした更新データは位置精度を与える。もちろん、トランスポンダの位置はテセウスのナビゲーションに影響を与えないように正確でなければならない。しかし、トランスポンダの位置はP-CodeのGPSで得られているのでこの点は問題はない。

テセウスが往路でThird Baseに着いたとき、その(Jollifyから積算された)左右方向の誤差は移動距離の0.5%で、前後方向の誤差は0.4%であった。

復路ではINUのヨー方向の修正がなされ、テセウスに伝えられた。前後方向に関しては、特に問題ではなかったので、なにもなされなかった。方位は、(そこで位置の修正がなされる)トランスポンダに接近するために重要であったが、前後方向の誤差はそれを妨げることはなかった。方位が修正されたので、復路での左右方向の誤差は移動距離の0.04%であり、驚くべき改善がなされた。

ShortstopとSecond Baseでの前後方向の誤差は往路と同程度の0.6%であった。他の地点での前後方向のデータはきれいなデータではなかったので、使えるものではなかった。

さらに2度目のケーブル敷設ミッションでは更に正確なナビゲーションができた。帰途の最後でビークルのサブシステムの1つに不具合が発生し、海底のテセウスを調べるためにROVを投入しなければならなくなった。この調査で往路に設置したファイバーケーブルがビークルのすぐ近くに見つけられた。往路と復路は同じ変進点を使っていたので、250kmの航走の後でもその復路がその往路とほぼ同じであることは明らかである。

 

8. 結論

慣性と音響のハイブリッドなナビゲーション装置はテセウスというAUVのために開発された。テセウスは84度の高緯度域の北極の海氷下で非常に正確にケーブルを敷設することができる。ナビゲーターは移動距離のおよそ0.05%.距離約200km、時間にして28時間のミッションで時間当たり位置のドリフトが4mという正確性を示した。テセウスは自律的に、180kmの航走の後、一辺が200mで氷から吊り下げられた三角形のロープを通り抜けることができることを示した。

 

感想:

大きさ、速力など、海洋科学技術センターで現在開発中のAUVに非常によく似ているが、最大潜水深度が1000mとセンターのAUVの1/3となっている。このため、耐圧殻等の基本設計に余裕がある。ただし、氷海域での使用実績を踏まえた実用的な工夫が随所に見られ興味深い。円柱型のユニットを重ねて整形する基本構造方式や氷板に穴を開けたランチャー設備は参考となろう。

 

 

 

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