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5 紛争の解決

 

第三次海洋法会議では、恐らく最も重要な論点は紛争解決に必要な洗練されたメカニズムの構築であるが、議論は不活発であった。代表団は、海洋の利用者及び沿岸国に関する義務と、特に権利については、かなりの成果を挙げることができた86。交渉を終えるための唯一の方策は、曖昧な専門用語を使用することにより、問題を先送りすることである。これは複数のEEZが重なり合う海域を巡る問題について特に顕著である。更に関連する問題の海域は、EEZと公海の境界であり、そこでは領域にまたがる問題が生起し得る。たとえ条約の文言がより正確であっても、それによっては解決ができない紛争が生起するのである。国連海洋法条約は、管轄権の移転を要求したが、しばしば以前の海洋の利用者が自己の権利が踏みにじられたとして新たな紛争を呼び起こしたのでる。

国連海洋法条約は調停を要請し87、国際海洋法裁判所により解決が図られない係争88 89については、国際司法裁判所、或いは調停裁判所のようなところで審議されることとした90。深海底鉱物資源を巡る紛争さえ新国際調停機関の特別海底紛争審議室91(Special Seabed Disputes Chamber of the new International Tribunal)に提訴される。当事者が紛争の解決のために同一の手続きを受け入れない場合には、付属書VIIに従って仲裁にのみ付すことができるとしている。国連海洋法条約が近年発効したことから、新たな国際海洋法裁判所が形成されつつあり、その代表が誰になるかについては、筆者がこの解説書を執筆中は、海洋法の世界で噂が飛んでいる。

拘束力の有る決定を下す手続きに対して紛争の解決を付託するという制度は、"現代の多国間協定が採用している様々な紛争解決制度の中で最も意味の有る制度"であると言われてきた91。しかし、限界が無いわけではない。"拘束力の有る決定"を下す為の手続きの効果は、締約国が係争問題を第三機関の仲裁に付託しないことを許す規定によって相殺されている。

 

 

 

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