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また、当試作の手法を、分野ではなく問題点と置きかえれば、その問題解決にはどのような分野協力や複合手法が必要かという見通しも立てることができ、問題解決のための対策模索にとってかなり有効な手段になることも十分に考えられよう。

 

5-1-1 教育の場での活用

分野整理は、マクロサイエンスを複雑系研究にとって一つの現状理解─解析の手法として有益であると同時に、教育の局面でも活用できるものである。

単純な例を、モデル・グローブ作成作業についてみてみよう。ある研究ターゲットとなる領域を課題とし、学生にはそれの8象限分割と分野例・関連項目例の点群をブロットさせる。学生の理解度や関心度によって1人1人異なったグローブができ上がる。さらに、点群にシナプスを張る作業を進めれば、学術的理解力や応用力などの能力表現が類型化する。

そのような各個のグローブを相互い比較することにより、参加者全員の理解力は確実にレベルアップするであろう。大学院ゼミ等に格好の教育素材であることは確かである。また、既存のグローブについて類似の検討を加えることにより、学生の理解度は飛躍的に高まり、場合によっては新分野の開発や旧分野の在り方の見直しなど、学術的実益も上げることが可能となるであろう。

別のアプリケーションの例を考えてみる。それは、幼児教育における個性・性格判断の素材作成に関わるものである。図1のようなグローブ枠を作り極性を持たせた象限配分で面接、ヒアリング、観察等による場と局面を分野点として記入し、3DCGで解析してみる。そこでは、場合によっては同一項目が時刻の違いで別のパターンをとることも出てきて、ダイナミックな行動心理分析につながろう。

ここでは幼児教育のツールとして“立体目次”発想を活用しているのであり、もっと深くこの方向ヘグローブを特化させることにより、かなり有効な解析結果を得ることもできよう。臨床事例を同様に扱うことにも可能性は開けている。

次に、この“立体目次”手法がビジュアル手法という大きな特性を利するものなので、ビデオ学習による画像利用の教育に有効である実例を挙げてみよう。

放送大学の放送科目に、文系─理系の枠を超えた学習として「地球環境を考える」という主題科目が置かれている。複数の講師が15回にわたってそれぞれの立場から地球環境の諸局面を論じている。その中に、地球環境や地球環境問題を扱う上に、どのような学問分野がかかわり、いかなる関連アイテムが存在し、それらがどのように相互に関わっているかを示すグローブを作成し、3分程度ではあるが、使い方、考え方を説明した(表1)。

グローブ研究が主題ではなく、このような分野の整理が、地球環境という代表的な複雑系の理解に役立つ、というデモンストレーションであるが、かなり有効と判断される。

このようなTV放送教育で、グローブの扱いや点群の性格を動画像として提供するのは、将来は本プロジェクトの主旨の大きな柱となると考えられよう。放送大学では、大学院化構想が実現する場合には総合文化科目の一つとして「地球環境科学」を用意しているので、一層ディテールズに踏み込んだグローブ提示が考えられる。

関連して、本プロジェクトで海洋科学と関連させて制作した「地球科学」グローブや、「地球規模科学」グローブを適切に採用することにより、一般の学生の授業や講演にでも“立体目次”手法と発想を活用できることは言うまでもない。現実に、早稲田大学教育学部における学部授業「地球環境科学」では、そうした内容をとり入れ二次元素材レベルを中心に活用している。

 

 

 

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