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第5章●期待される成果

 

5-1 試作からみる成果

 

立体目次試作の第1段階は、273項目について8つのくくり方(分野集団の形としては球状体:グローブ)でまとめてある。何を視点にもつかで、関連する分野の配置はさまざまに変わる。元来、研究分野(学問分野)というものは研究を進めるうえでの便宜上の区分は、つまり人為分類であるから、ある1分野が必ず対応する上位分類群に属するものではないことは自明である。

しかしながら、実際の研究遂行の場において、例えば大学院の学生は、自分の置かれた研究環境が示す分野特性に依存しきって研究を進めるのが通例であり、広く関連分野まで睨んだ全体像を知っての行為ではない。このような場合、今回試作したような立体的分野配置の形やシナプスのつながり方をビジュアルに認識することができるならぱ、研究はより広域的なニュアンスを含みながら、正当な展開を図れることになる。

巨大で複雑な研究対象として位置づけられる地球とか海洋、あるいは生命体といったアイテムに関わる研究分野には、そうした広い視点での分野認識、具体的には、どのようなグローブ形成に関与しているかという座標の可視化という事態があると、格段の意義発見が期待されることになる。

分野は切り口、というセンスは、学問をかなり長く深く修めて初めて獲得されることが多い今日の分化した研究事情にあって、今回試作した程度の複雑さのグローブでも、かなり判り易い分野位置認識を即座に得られることになり、一応の成果を挙げたと自己評価できよう。

確立されている研究分野や、開拓されて間もない分野などの性格の違いなども、この立体分野配置図から読み取ることができよう。また、分野名もなく専門家も見当たらない、いわば未開拓分野が存在し得ることが示唆されるような、研究空白域の存在発見にも威力を発揮するものと期待される。

具体的な1事例として、1998年12月に東京大学海洋研究所で開催された共同利用シンポジウム「水産学の空白領域」における、以下のような立体目次的発想での研究発表がある。

・水産学の空白両域のキーワード(清野聡子)

・分野整理学からみた水産科学での空白領域*(濱田隆士)

*この発表に用いたデータは、本報告の「近代水産科学」グローブとして採択されている。

 

 

 

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