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4-2-2 日本の博物館

博物館界は、通常博物館、美術館、動物園、水族館、植物園等を含む大変大きなまとまりであり、しかも組織、運営上国公立から企業、宗教法人、労働組合をも含む多彩な設立母体をもつことで、まさに複雑系をなしている。加えて、営業種目がアートから、科学技術、自然史全般にわたるのであるから、トータルにみると文系、理系の区分さえもはずして捉えなければならず、真の社会的複雑体である。

日本の博物館に絞って考えると、さらに種々の要素がからむ。それは、日本にとって博物館は明治の文明開化期における輸入文化の一つの先端を担ったものであることや、外国博物館事情に追いつけ・追い越せムードの歴史を通じて、今日本の博物館は、“設立ラッシュ”期から多様化時代を経由し、来る21世紀へ向けて、大衆に愛されるべき、“開かれた博物館”を目指して、国公立博のエージェシシー化が始まったばかりの、一つのエポックメーキングな良い意味での競争時代に突入した時点にあることは注目されねばならない。

自然史系の博物館は、水族館ならずとも海洋に関連するところが多い。標本、展示アイテムでそうであることだけでなく、現代では地球環境の主役として、大きいグローバルな思考幅で捉えると、海洋研究関連領域─周辺事情として一考するに相応しいものと言える。

奥野・濱田による「バリアフリー博物館からユニバーサル・ミュージアムヘの過程」(博物学雑誌へ投稿中)から、立体目次手法を用いた日本の博物館を解析してみよう。

表1は、グローブ8象限を成立・設置、館園種、収集、展示、研究、教育・学習、保全・保護、運営の領域に分け与え、それぞれ内球に分野例、外球に要素アイテム例の点群を配した基本表である。これをさらに二次元に展開したものが図1である。

このような日本の博物館についての分野・項目整理から何を汲み取り、何を考えるのかは今後の課題として残されようが、そのためには領域をそれぞれのグローブ化するさらに詳細な検討が必要となろう。

本格的な生涯学習時代に入って、子供達の学校での制度教育における「総合の学習」の展開が次世代へのフォーマル・エデュケーションの流れを作ることになるのであろうし、博物館諸施設を上手にインフォーマル・エデュケーションのメディアとして利用することが期待されているのである。自然史関連で言えば、海洋や海洋生物での実物体験学習〜ハンズ・オン学習が注目されるところである。

現実のインフォーマル・エデュケーションの運用に当っては、現教員や学業員だけの活躍に期待するのはおそらく無理で、社会学習方式の中でボランティアや元教師、退職した有経験者等のリーダー育成とその活躍という局面が不可欠であろう。加えて、市民一般の博物館や博物館活動に対する深い理解が大切であり、まさに幅広い生涯学習形態が模索されねばならない。博物館界中、もっとも海洋研究とのつながりが大きいのはもちろん水族館である。万トンクラスのアクリル大水槽出現や水質管理技術の著しい進歩によって、わが国の水族館界は空前の“ブーム”形成にまで至った。トンネル型水槽により、居ながらにして水中遊泳をしているかの体験をできる時代に至り、水族と人びととの距離は一気に縮まった感がある。図2に水族館についての分野整理グローブを示しておこう。

 

 

 

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