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V.B.概念はそのような境界再考の際の1つの単位である。さて、保全生物学という分野の「保全」というもの、がそれ自体、保全「活動」を指すように、Disciplineによっては社会活動(Movement)もそのなかにこめることも多々ある。ふつう、書き言葉を主体として文書媒体を中心としたジャーナル共同体において、書き言葉は、宣言的知識、普遍命題の提示であることが多い。そのため、V.B.は、そのまま行動様式のV.B.とはなり難い。しかし、その書き言葉のなかに活動の様子を描きこむことは可能である。専門性をジャーナル共同体のV.B.によって保持し、かつ社会活動としての社会への参与の記録をV.B.の判断のなかに加えていくこと。これは昨今、学問の社会への貢献やアカウンタビリティ(社会への意義を説明する責任)が問われている現在、学問領域に求められつつあるものであり、さらなる吟味が必要な点と考えられる。

 

2-2 海洋科学の諸局面(各論事例)

 

2-2-1 海洋学から海洋科学へ

本来「海洋学」という呼び方の中には2つの要素を内在していた。その1つは、海洋の学:Oceanologyであり、他の1つは、いわば海洋誌:Oceanographyである。おそらく、理念的には

Oceanology。膂ceanography

の関係が成り立つのであろう。

海洋の諸事象を記述することが主務であるOceanographyには、従って波、海流、水質、生物相、気象と海象などのアイテムが含まれている。Oceanologyは、広範な視点で海洋関連の文化や政治・経済、地理、民族、民俗学などもとりあげることができる懐の深さを持っていると考えてよかろう。

以上のような捉え方は、大変クラシックな扱いであり、古典海洋学と呼んで差支えなかろう。北欧、英国、ポルトガル、スペイン、イタリア等、いわゆる海洋国家が航海や貿易を介して蓄積してきた学問の広がりであり、それを古典的自然科学の手法でとり扱う局面であるとしてよかろう。

同じく海洋国である日本は、それではどのように海洋学に貢献できたのであろうか。海洋にも地理的なrageonalismが存在するのは確かであるから、海洋誌についてはそれなりに大きな成果を挙げている。

 

 

 

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