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海上や海中の施設や海上で行われる経済的、社会的活動もすべて陸上のどこかに登録されている。しかし今後は海洋そのものを一つの社会的存在として認知し、そこで行われる社会的活動を、海洋中心の観点で組織する必要がある。そのためには海洋そのものの社会的管理に関する法や制度を飛躍的に拡充しなければならない。その際国家主権の概念を海洋にまで拡大し、更にそこで行われる経済活動を市場原理に委ねることは、現実的にも困難が大きいのみならず、社会的公正に反することになるであろう。海洋全体を人類の共有財産として公共的に管理、利用するという観点がどうしても必要であり、そのためには直接海洋に接していない国々をもふくめて国際的協力体制を作らなければならない。それは単なる理想ではなく、海洋を適切に利用するための現実の必要から生まれているのである。

 

2-1-4 Science Mapの方法論〜科学分野および分野間の距離をいかに定義するか〜

(1) はじめに

「超領域科学としての海洋研究」においては、海洋科学を形成する研究領域の相互関係を可視化する作業を行っている。この可視化は、海洋科学を形成する諸研究領域間の関係を一目で判断するために有効な作業である。しかし、この可視化作業のためには、まず海洋科学を構成する研究領域の定義と、その領域間距離を定義することが必要となる。また、海洋科学に限らず、ある学際研究分野を把握するためには、やはり上記のような研究領域の可視化が重要である。そこでもやはり、領域の定義と領域間距離を定義することが必要となる。そこで、本稿では、この「研究領域の定義」、「研究領域間距離の定義」というものが、どのように操作的あるいは理論的に可能であるか、について考察する。

 

(2) 領域とは何か?

1] 教育制度からの定義

研究領域とは何かを考える際、ひとがまず思い浮かべるのは、disciplineの定義である。disciplineは、「それ自体の教育訓練上、手法上、分野上、特定され、教えることが可能な知識の集合体」である(1)。しかし、このなかに教育訓練という言葉が入っているように、disciplineの定義には、教育「制度」の側面が入ってくる。知識生産の現場による研究領域の定義と、教育制度の現場からの領域の定義とでは異なることが予想される。

 

 

 

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