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第1章●調査・研究事業の概要

 

1-1 社会的背景

 

近年、地球環境、エネルギー、食糧、人口などさまざまな地球規模における問題への対応が強く求められている。これらの諸問題に対しては、生活に対して深刻な影響が及ぶようになってから対策を講じたのでは間に合わず、可及的速やかに問題解決への妥当な道筋を明らかにしていくために科学・科学技術による新しい視点からの取組みが必要となってきている。

地球環境問題は、人口の(膨張)増大、食料・エネルギー・資源等の生産・消費形態など、経済社会全体の動きに起因する事柄であり、自然科学のみならず人文・社会科学も含めた総合的な対応が必須である。一方、地球全体を把握する手段として、宇宙からの観測や地上及び海洋を含む立体的な観察・調査への取組みが必要となってきており、同時に国際的な連携も強く求められている。

それには地上における人類の生存を長期にわたって確保するとの観点から、それぞれの問題を独立に考えるのではなく、さまざまな問題の全体を俯瞰してその本質が明らかになるように整理し直し、均衡のとれた感覚をもって対応していかねばならない。しかしながら、持続可能な社会を展望しようとする時、現行の産業経済システムでは持続可能ではなさそうだという点を指摘することは可能としても、それではどのような産業経済システムが望ましいかという点になると、それは誰にもわかっていないという現実を直視しなければなるまい。

環境を支配する自然の法則を我々人間の力で変えることはできない。しかし、我々人間がつくった法律や制度などや慣習の下で築き上げた産業経済システムについては、我々自身の発想と力で変えることができる筈である。

21世紀における持続可能な社会とそれを支えるエネルギー体系について、今や人類は真摯に考えねばならない時期に到達しているのであり、人類が生まれながら持っている知恵と、これまでに獲得・習得した経験則や自然の法則、そして科学的知見を総動員して有効施策を模索することが要求されている。国際的な動向を踏まえた展望に立てば、人口増加、過激な農薬使用、工業開発の海浜地域への集中、それに連動した不適切な環境や技術・経済の政策など、閉鎖された海域ではそれらが総合的により顕著に表現されよう。加えて、開発途上国での環境変化もまた一層深刻化の度を増しつつある。

これまでの世界経済にあっては天然資源の過剰な開発が先進国の市場の力だけで決められ、開発途上国の環境の質と資源を犠牲にして稼動していることが多かった。

 

 

 

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