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図I-11 直線状の海浜に斜めに入射したうねりは、海岸に近づくにつれて峰線が岸に平行になる。

 

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図I-12 海岸形状と屈折にともなう波のエネルギー集中と分散

 

5. 津波

海底下で起こった地震によって、震源直上の海底が急に隆起したり、陥没したりすることによって起こされる波を津波という。津波の周期は数分から数十分と長く、波長も外洋の深海部では100?から1000?にも達する。そのため、大洋を進行するときも津波は長波の性質をもつ。

津波の大洋上での波高は、数cmから高々1m程度でしかない。しかし、海岸に近づいて、水深が浅くなると、波速が小さくなり、峰と峰の距離が短くなって波高が増大する。さらに、津波の波長が通常の湾や入江の大きさに比べて長いため、波の山の部分が水の塊として押し寄せることになり、特にV字型の湾では、湾の奥に水が集められて非常に高くなる。典型的なV字湾である三陸町の綾里湾では、1933年の三陸津波のとき湾奥での津波の遡上高は24mにも達した。また津波の周期が、湾の固有振動の周期に近いと、共鳴を起こして波高が高くなる。1960年のチリ津波に際して、大船渡湾で大きな被害が出たのは、その典型的な例である。

津波の大きさは、一般に地震のマグニチュードが大きくなる。しかし、断層の起こる速度が比較的小さい場合には、放出する地震波のエネルギーが小さくても、大きな津波を起こすことがあるので、地震のゆれが比較的小さい場合でも、警戒を緩めてはならない。このような地震を津波地震(ぬるぬる地震)とよんでいる。図I-13に、海岸への津波の到着時間から逆算した1944年の東南海津波の波源域を示す。図に示されているように、波源域は余震が発生する範囲にほぼ対応する。この場合のように、波源域が陸に近いと地震の後すぐに津波が押し寄せるので、緊急に避難態勢をとる必要がある。

 

 

 

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