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I 日本を取り巻く海

 

1. 海底地形

日本近海の海底地形図を図I-1に示す。陸地の外縁にある200m以浅の平坦な部分が大陸棚である。これは氷河期に海面が下がった時の水位にほぼ対応しており、その時代に波による侵食・堆積作用によってつくられたものと考えられる。東シナ海では大陸棚が発達して、その幅は1400kmにも達している。この200mの等深線をみると、海水面が下がった氷河期には九州は中国や韓国と陸続きであったことが分かる。同様に、北海道北部はサハリンを経てアジア大陸につながっている。しかし、これらの部分をのぞくと、わが国周辺の大陸棚の幅はかなり狭い。大陸棚の外側には大陸斜面と呼ばれる急傾斜の部分がある。わが国北部および伊豆マリアナ海嶺の東方には、千島─カムチャッカ海溝・日本海溝・伊豆─小笠原海溝が連なっており、南西諸島の南東側には琉球海溝と呼ばれる深い海溝がある。琉球海溝は北東にある本州南岸沖の南海トラフにつながっているが、南海トラフは深さも浅く、両側の斜面も比較的緩やかで、このような深みは舟状海盆と呼ばれる。これらの海溝は大洋プレートが沈み込む線に沿って作られたもので、地震帯や、火山帯がこれと並行する形で存在する。海溝よりも沖側、あるいは海溝が存在しない場所では大陸斜面の外側には、4,000〜5,000mの平らな大洋底となっている。しかし、この図に見られるように、大洋底にも点々と円錐形の海山が存在する。東シナ海・日本海・オホーツク海のように、大洋部分から島弧などで隔てられた海を縁辺海(縁海)と呼ぶ。東シナ海は、南西諸島の内側にやや深い約2,000mのくぼみがあるものの、すでに述べたようにその大部分が浅い大陸棚から成り立っている。これに対して日本海は深く、その北半分には約3,500mにも達する平坦な海底(日本海盆)が広がっている。日本海の中央には大和堆と呼ばれる浅瀬があるが、その南側の、南半分の地形は複雑である。

海底地形の情報は、基本的には各種の海図に与えられている。海図は航海の便宜を図る目的で編集されたもので、広い大洋全体を対象とするものから、近海あるいは個々の海湾に対するものまで種々のものがある。また、最近では各種の電子海図も発刊されるようになってきている。日本近海の海図、電子海図の索引を巻末付録に示しておく。また、一般的な水深分布情報を与えるものとして海の基本図があり、日本近海についての情報が得られる。大洋全体を対象とする場合には米国のNGDCが出しているETOP05が便利であろう。日本近海・西北太平洋については、最近海上保安庁水路部が作成した、500mメッシュのJ-EGG500が利用できる。海岸線や等深線情報を電子化したものもあり、詳しくは海洋情報研究センターの海洋情報室に相談されたい。なお、これらの水深情報には、船舶航行に危険であっても、小規模な浅瀬・岩礁等が記載されていないので、航海用にはあくまでも海図を利用すべきである。

 

2. 海流・海況

日本近海における主要な海流の分布を図I-2に示す。最も代表的な海流は黒潮であって、北太平洋の亜熱帯循環の西側北上部分を構成している。大洋中の循環には西岸強化と呼ばれる現象があり、黒潮は北大西洋の湾流と並んで世界でも最も強大な海流の1つである。フィリッピンの東方で、北赤道海流から分かれて北上する黒潮は、台湾の東で東シナ海に入り、ほぼ200mの等深線に沿って北東に流れ、トカラ海峡から再び太平洋に出る。本州南方での黒潮には、2つの安定した流路、潮岬沖から真直ぐ東進する直進路と、遠州灘沖に出現する大冷水塊を回る大蛇行路があり、いずれの流路も、一旦それが出現すると、数ヶ月から数年持続することが知られている(図I-3)。

 

 

 

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