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図10 ホームページの例:表面水温分布図

 

これは仮想的に大潮の1月30日の朝3時に伊勢湾シーバース(xで示した点)から漂流させたもので、北北西の風5m/sのもとでは、3日半ばかり経って湾口近くまで漂流することが分かる(図11)。これは、東風の場合であるが、この場合は四日市周辺に集中して漂着することが分かる(図12)。複雑に変化する風や潮流のもとでは、この様な漂流予測シミュレーションの結果が、現実の防災計画の立案に非常に役立つことになる

以上、情報の流れに沿って述べたが、種々のフィードバックが、出口側から入口側へなされなければならない。即ち、利用者側から見れば、"必要とする情報を、正確に、迅速に、使いやすい形で"というユーザフレンドリィなものが要求される。提供という立場からは、データベースへの要求として、情報が十分品質管理され、最新維持されており、加工しやすい形で整理されていなければならない。例えば、各種の情報図を作る場合を考えると、必要な情報項目が容易に抽出でき、それが地図上に分かりやすい形で表示できるような、フレキシブルなデータベースが望まれる。さらに遡ると、原材料である情報・データは使用目的に応じて要求される精度、時空間密度が十分でなければならず、ある場合にはリアルタイム性が必要である。したがって、一般的な基礎的観測を充実させるとともに、目的に応じた効率的な調査の実施が非常に重要なこととなる。

なお、ここで司会の永田から、情報の性質として、油汚染のようにリアルタイム的な情報の収集・配布を必要とするものと、時間をかけても可能な限りの量の情報を収集し、十分な品質管理を目指す方向の2つがあることが指摘された。一般的な海洋観測データについては、原則として気象庁がリアルタイムのデータを、水路部のJODCがヒストリカル(ディレードモード)なデータを収集管理する体制にある。海洋情報研究センター(MIRC)の役割は、1つはJODCの活動を補佐して、JODCでは実行できないような仕事をすることで、データの品質の管理を行う高度のプログラムを作成してJODCに提供したり、一般ユーザーの個々の要請に応じてデータを加工・提供(有料)するといった仕事を分担することになる。また、データを通して、海洋の知識の普及啓蒙もMIRC活動の一つの柱であり、このシンポジウムもその観点から開いている。

 

海上保安庁水路部沿岸域海洋情報管理室と沿岸情報管理システム(柴山信行氏の講演から)

沿岸海域環境保全情報の整備の事業は、平成9年度から始まっており、油流失事故に際して防除処置をより効果的に行うために必要な情報を整備(提供を含む)しようというものである。防災というのは非常に多岐にわたるものであるが、ここでは油流失に関連したことを論ずる。平成9年というのは、1月にナホトカ号の油流失事故があり、7月には続いてダイヤモンドグレース号の事故があった年であるが、予算的には平成8年12月にすでに内示があり、ナホトカ号の事件が直接のきっかけになった訳ではない。しかし、海上保安庁水路部沿岸域海洋情報管理室という組織が、平成10年4月に発足するきっかけをナホトカ号事件が与えたことは事実である。事業の背景には、1990年に設定されたOPEC条約、「油による汚染に関わる準備、対応及び協力に関する国際条約」があり、わが国も平成7年に批准し、この条約が同年8月1日に発効したことがある。

 

 

 

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