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概論

・海底地形と重力の関係は地形の波長に依存する関数で記述できる。相関を持つ波長帯は理論的・経験的研究から15〜160kmであることが示唆されている。

・15km未満では海底から海面への上方接続時に情報が減衰してしまう。

・160km超ではアイソスタシー補償が成立して海底地形起源の重力異常はほとんど現れない。

・本研究では重力に対する地形の比S(x)を各領域毎に経験的に決定する。

・堆積層が薄いと、海水/岩石の密度差が大きいので重力と地形の相関が良い。

・堆積層が厚いと、海水/堆積層の密度差が小さいので重力と地形の相関が悪い。この場合、堆積層の下の岩盤が重力異常の起源になっていると推測される。これらの領域では短い波長ではほとんど平坦なので、S=0(相関無し)とした。

・Inverse Nettleton procedure : 本研究ではグリッド化した船舶音響測深と重力にバンドパスフィルター処理をし、重力を各領域毎に海底の深さまで下方接続した。理論的には両者は線型関係である。従って、線型回帰法で重力に対する地形の比と相関を推定した。この手法は、船舶音響測深データが利用可能な領域でのみ使用された。

・本研究の水深予測結果b_p(x)は、バンドパスフィルター処理・下方接続した重力g(x)にスケーリングファクターS(x)を掛けた中間波長の水深予測結果と、既存水深の長波長成分d(x)との和である。

b_p(x)=d(x)+S(x)g(x)   (1)

・現時点で最良の水深グリッドデータETOPO-5でさえ、船舶データとよく一致しているとは言い難い。(Smith and Wessel, 1990 ; Smith, 1993)

 

データの準備

・南緯30度以南のデジタル船舶音響測深データは主に2つのデータベースから取得した。合計581測線。品質チェックはSmith(1993)の手法に準じた。

1] ラモント-ドハーティ地球観測所のデータ。

2] 米国国立地球物理データセンター(NGDC)が整理したもの。1]に比べ南極海の最新データが豊富。

・船舶測深データを経度方向に20サンプル/度、緯度方向に40サンプル/度のデータを持つメッシュに分割した。範囲は南緯25.8度〜73.8度。フィルターのエッジ効果を考えると利用できるのはこのうち南緯30度〜70度。セルの大きさは南緯60度付近で2.75km四方。

・格子点への水深データの割当て方法

1] 全ての音響測深データを最も近い格子点に割当てる。

2] 複数の測深データが割当てられた格子点について測深データの中央値を割当て直す。

 

 

 

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