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看護婦が最後の癒しの器に

 

松江市立病院

三浦 節子

 

はじめに

 

6週間の研修を終えて学んだことは本当にたくさんあった。その中でも緩和ケアの考え方がはっきりし、患者さんを看る視点が増えたと思う。

緩和ケアとは、治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである。痛みやその他の症状のコントロール、精神的、社会的、そして霊的問題の解決が最も重要な課題となる。緩和ケアの目標は、「患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOLを実現することである。末期だけでなく、もっと早い病期の患者に対しても治療と同時に適用すべき点がある」としている。以下に全人的ケアに沿ってまとめる。

 

痛みやその他の症状のコントロール

 

患者中心の症状マネジメントが重要になる。症状は患者が持っているものであり、患者と看護婦が共同作業でアセスメントし、実際に行動できるように患者をサポートすることが必要である。

症状マネジメントのアプローチには、1]症状を定義する2]症状のメカニズム、出現形態を明らかにする3]患者の症状体験を明らかにする4]症状マネジメントの方略を明らかにする5]症状マネジメントの結果や状況をアセスメントする6]基本的知識、技術、サポートを導き出す7]基本的知識、技術、サポートを提供する8]変化した患者の症状体験を明らかにする9]症状マネジメントの効果を明らかにする、とある。

疼痛コントロールについていえば、患者の訴えを軽視せず、訴えを信じ対応する。痛みの原因を全人的視点から正確に診断し、痛みの増強因子・軽減因子を明らかにする。患者に合った鎮痛薬の投与方法を選択し、投与量を調節する。鎮痛効果と副作用を繰り返し評価し、投与量の調節を行う。患者と十分話し合い、現実的な目標を設定する。

これらのことを行うためには、痛みや治療などの知識、緩和に有用な技術はもちろんのこと、患者を全人的に把握する能力、症状や方略を明らかにするためのコミュニケーション技術が必要であると考える。

また、患者のセルフケア能力を維持したり、伸ばす、足りなければ補う、患者が状況を理解し、それにあった行動を判断し、行動がとれるようサポートする必要がある。

 

精神的問題

 

患者は身体的苦痛とともに、不安、いらだち、孤独感、恐れ、うつ状態、怒りなどの精神的苦痛を持つ。そして、病状が進むにつれ、喪失体験を重ねていかざるを得ず、精神的負担は大きくなっていく。

精神的援助の基本は、十分なコミュニケーションを図っていきながら、患者との信頼関係を築いていくことである。そのためには、優れたコミュニケーションスキルが必要になる。コミュニケーションスキルの基本は、傾聴、共感、感情への対応である。コミュニケーションの出発点はまず聴くことからである。患者が訴えたいことに対し踏み込んで聴く、Open Questionなどをうまく使い、根気強く聴いていくことが必要である。そして患者がわかってもらえたと感じられるよう、共感できたことを、言葉と態度で伝えていく。患者の感情に焦点を当て、相手の感情の動きをしっかりキャッチすることが重要となる。非言語的コミュニケーションも必要である。スキンシップを図る、何かをするのではなく、側にいる、存在することが精神的援助につながる。

 

 

 

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