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ニーズに合ったケアの提供へ

 

奈良県立医科大学付属病院

中嶋 幸子

 

はじめに

 

私は、日々忙しく業務に流される中、患者にとって必要なケアを提供することができているのかと、時々疑問に思う時がある。より一層ケアを充実させたいと思うが、時間に追われゆとりがないために充実できていないのが現状である。他施設ではどのような緩和ケアが行われているのかを知るために、今回の研修に参加してみようと思った。

研修では、緩和ケアに関するあらゆる分野の講義を受けることができた。講義終了後、ホスピスでの実習があり、緩和ケアの実際に触れ、体験することができた。研修の中で得た知識をいかに自分のものとし、どれだけ臨床の場で活かしていけるかが私にとって今後の大きな課題だと思っている。さらに、研修の中で他施設の看護婦と交流がもてたことは、かけがえのない糧であり、いつまでもこの出会いを大切にしていきたいと思う。

6週間の研修を通して、今後自分がどんな看護を提供していこうと考えているのかを次にまとめた。

 

コミュニケーションスキルを学んで

 

緩和ケアの目指すものは、全人的ケア及び、患者と家族が可能な限り人間らしく快適な生活を送れるようにケアを提供していくことである。そこで、私たちはどのように患者や家族と関わっていくべきなのかを考えた。

緩和ケアとは、身体症状の緩和だけでなく、どこまで精神的・心理的援助ができるかということである。精神的・心理的援助をしていくためには、患者がどのような気持ちなのかを、しっかり把握し理解できていなければいけない。そのためには、「たぶんこうだろう」「おそらくこうに違いない」と、推論や自分の感情を当てはめて判断せず、相手が言わんとしていることの本当の意味を理解することが必要となってくる。患者には、生きてきた人生があり、それぞれの生活習慣や価値観がある。だからこそ、その人の気持ちを十分尊重し、ニーズに合ったケアを提供していかなければならない。医療・看護における倫理の中に「人としての尊厳と権利の尊重」があげられている。わたしは、患者の意志を尊重し看護してきたつもりであったが、尊厳や権利の尊重、平等な対応、プライバシーの保護、最善の看護、危険や害からの保護など、実際これらすべてをふまえて看護できていたかと問われると、できていなかったように思う。それどころか、これまでは患者側中心の看護でなく、看護婦側中心の看護になっていた可能性すらある。これからは、患者には知る権利、選ぶ権利があるということを肝に銘じ、患者を人間として尊重した、より質の高いケアを提供していきたいと思う。

そこで、より質の高いケアを提供するためには、効果的なコミュニケーションの中での情報収集が必要となってくる。今回、ロールプレイという方法を使用し、実際体験することによりコミュニケーション・スキルを学んだ。その中で、患者が何を求めているのかを知ることができた。私は患者役をした時に、ただゆっくりと話を聞いてほしい、つらい気持ちを分かってほしいと思った。患者として、看護婦に不安や疑問を投げかけた時には、実は答えを求めていたのではなく、なぜ、どうしてと自分への問いかけをしていたような気がする。

 

 

 

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