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学びを活かして“暖かいケア”の提供を

 

奈良県立医科大学病院

中嶋 幸子

 

今回の実習で初めてホスピス病棟に足を踏み入れることになったが、まず、「なんと設備の整ったところか」と驚かされた。また、「困っている人がいたら手をさしのべることを第一とする。自分のことのように人の命を大切にし人格を尊重する。人が本来持っている生き方を信じる」という病院の理念をもとにホスピスのケアや医療が提供されていると聞き、素晴らしいことだと感じた。

実習はペアの看護婦と共に行動し患者と接するという形で、看護の実際を体験しホスピスケアにあたるスタッフの役割を学んだ。また、病棟だけでなく、外来実習や訪問看護も体験することができた。

 

病棟実習の目標

 

1] 患者への接し方、対応の仕方、コミュニケーションの取り方の実際を知る。

2] 症状コントロールの方法の実際を知る。

3] 実施した看護がどのように記録に残され継続に活かされているかを知る。

患者の紹介を受けたが言葉を選んでしまい、どのように声かけをするとよいのかに戸惑いを感じた。婦長の患者に接する態度やコミュニケーションの取り方をみて、様々な心境にある患者に対して最善と思われる心配りをされていることに感心した。ケアに関しても一般病棟と違い、業務を進めるよりも、まず患者のペースにあわせ、患者を何より優先に考え動いておられた。朝も採血や検温はなく、患者が過ごしたいように自分のぺースで過ごし家庭生活が延長されているようであった。患者の部屋は病室というよりも、その方の家として考えなければいけないと教えていただいた。

処置やケアする時に時間の約束をし、約束は尊重されていた。患者の看護婦に対する信頼は「約束したから必ず来てくれる」という言葉に端的に表されていた。“信用される”お互いの信頼関係は本当に重要なことだと感じた。患者から看護婦へは「嬉しいね、ありがとう、申し訳ない」など感謝の言葉でいっぱいであった。これは、看護婦の関わり方に素晴らしいものがあってこその成果だと思った。また、患者とのコミュニケーションの中で学びがたくさんあることに気がついた。家族に対しても、立場や気持ちをゆっくり聞き、受け入れ、今後どのようにしていくかなどを、共に」悩み、共に考え、分かち合えるケアをされていた。

 

外来実習の目標

 

1] 外来患者への医師、看護婦の対応の仕方をみる。

2] 外来患者の心境を感じ取る。

患者はどこまでホスピスについて、疾患について理解され、どんな気持ちで診療を受けに来ているのだろうかということを知りたかった。

初診時に必ず「ホスピスに何を期待されますか」の質問をされていた。A氏;精神的ケアをして下さい。B氏;痛みのコントロール、心のケア、家族のケアをしてほしい。ホスピスに関してよく理解して来院されていると思った。しかし、実際の状況とずれがある場合は、患者、家族にわかりやすい言葉で詳しく説明されていた。医師と患者、家族との話を聞いていて、患者の意志をどこまでも尊重されていることを改めて感じた。

 

 

 

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