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緩和ケア病棟の看護がより具体的に

 

静岡県立総合病院

望月 節子

 

はじめに

 

国立がんセンター東病院緩和ケア病棟は病院本館に隣接して設けられており、院内病棟型の緩和ケア病棟である。当院のめざす緩和ケア病棟もこの院内病棟型であるので、実習での学びに必要な知識・技術を習得することはもとより、運営方法も参考になりました。

 

実習での学び

 

研修目標は1]緩和ケアの看護実践に必要な知識・技術・態度を講義と関連づけ学ことができる。2]チーム医療について学び、看護婦の役割について考えることができる。

病院内の環境整備は行き届いて静かで落ち着いた雰囲気であり、ゆったりとした時の流れを感じた。患者さんからの部屋すべてが窓側に面しており、季節の草花や紅葉したもみじが美しかった。環境からも患者やその家族は癒されていくのだろうと感じた。部屋には氏名の記載はなくプライバシーの保護がされており、一日の業務の流れや週間予定もなく、従来の医療者のスケジュールに合わせた患者のスケジュールではなく、患者主体の医療がここにはあると感じた。

 

1) 症状コントロール

入院患者を担当する看護婦とともに行動させていただいた。患者は痛みのために日常生活は制限され、不眠、食事の低下、不安といらだちがある状態であった。まず痛みを緩和するために患者をよく観察して患者の訴える痛みをそのまま受け止め、過小評価しない。食事や睡眠、排泄などの日常生活動作で痛みがどう変化するのか、今飲んでいる薬の評価をして主治医に情報を伝え、簡単なディスカッション後、持続皮下注射でモルヒネが開始される。痛みを感じる動作前には早送りをしていく。持続皮下注入法は患者の行動が制限されにくく、針の刺入・抜去が簡単で苦痛が少ない。患者の状態を見ながら痛みが軽減されたところでアナムネ聴取をする。決して無理はしない。患者によりそったケアがされていた。

 

2) 看護婦の役割

緩和ケアの中で幅広くかつ大切な役割がある。緩和ケア病棟では症状が変化した時や、何か問題が生じた時、あるいは予想された時、こまめな面談がなされている。面談は患者の家族、医師、看護婦の同席にて行われた。現在の病態、症状コントロール、今後の見通しについて説明され、その中で何が患者にとっていま大切か、必要か家族と共に話し合い、それにより家族が何をしなければならないのか、医療者はどんな情報を家族に与えなければならないのか、看護婦はこれらの調整役をしていた。この調整役は看護婦の大切な役割の一つであると思う。

家族の不安を早めにキャッチし、面談の必要性に気付いたことなど感心した。家族の疲労感に対するねぎらいの言葉がけもされていて、患者と共に家族のケアがなされていた。またコミュニケーション技術を磨き、患者・家族の話を傾聴、共感、受容していくこと、患者・家族のQOLの向上のための看護でなくてはならないことを実習を通して強く感じた。

 

 

 

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