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“側にいること”の大切さを知る

 

金沢大学医学部附属病院

北川 敦子

 

はじめに

 

今回、私は念願の緩和ケア病棟で実際に行われている看護に触れることができました。学生の頃から終末期ケアに興味を持ちながら、この実習まで足を踏み入れたことのない未知の世界を体験するにあたり、私は極度の緊張と期待で舞い上がっていました。この自分の気持ちに流されないように、実習の目的を

1. 緩和ケアの基礎を学び、終末期患者とその家族に質の高い看護を提供できる実践力をつける。

2. 研修での学びを基に大学病院でのあり方を学ぶ。

とし、その目標に

1) 症状のコントロールについて理解できる。

2) 家族に対するケアについて理解できる。

3) チームアプローチについて理解できる。

4) 以上3点の目標を基に大学病院での緩和ケアの方向性がわかる。

と掲げて実習に臨みました。以下に私が学んだことについて、目標に従って述べます。

 

症状コントロール

 

私の実習させていただいた六甲病院緩和ケア病棟では、症状コントロールを入院から約1週間で行うという目標が立てられていました。そのために、何度もカンファレンスが持たれていました。その中で、様々な薬剤とその投与方法が選択され、副作用についても一緒にコントロールされるようになっていました。早期に症状がコントロールされることは、単に苦痛をとり、患者さんらしさを取り戻すのが目的ではなく、患者さんとの信頼関係をより早く構築することに繋がるということを学びました。実際に患者さんの症状コントロールの場面では、上手くいくことばかりではありませんでした。その中でも患者さんの思いを重視し、支えていく姿に医療の原点のようなものを感じました。

 

家族に対するケア

 

入院時、家族にも面談が持たれていました。自分の病院での面談は病状説明だけですが、緩和ケア病棟ではまず医師と看護婦の両者が家族を労うことから始まっていました。この点はかなりのショックと感動を覚えました。家族は面談が終わる頃には、初めの悲痛な表情は消え、安心した表情になられていました。家族は医療者から認められ、支えてもらえるという安心感を得たことが、この表情の変化に繋がっているのだと思いました。

私のこれまでの家族ケアは、ゆっくりと時間が取れないなど理由をつけて、その必要性を感じていたものの自ら遠ざけていたことに気付きました。婦長さんがおっしゃってくださった「家族は遺族となることを念頭において入院当初から関わること。患者さんだけではなく、家族の生活歴を理解し、中立として接すること」の大切さを学びました。今まで家族は患者さんの付属という見方をしていて、家族が多少の犠牲になることは仕方ないと思っていました。また、患者さんと疎遠になっている家族になればなるほど家族を責めて、家族のことを理解しようとすらしていませんでした。しかし、家族には家族の歩んでこられた道があり、その道中で今の関係ができてしまったことに恥ずかしながら気付きました。

 

 

 

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