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緩和ケアの基礎を学び感じたこと

 

国立療養所近畿中央病院

中野 良美

 

はじめに

 

緩和ケアは特別な人の医療であると思い、それを勉強しようと研修を受けた私にとって最初から最後まで自分を考えさせられた。症状マネジメントさえできれば緩和ケアができると思っていたため、実際の緩和ケアを学ぶことができ、視点・考え方を変えることができた。

 

緩和ケアについて

 

緩和医療とは痛みをとることだと思っていたが、WHOによると、最終目標は患者とその家族にとってできる限り良好なQOLを実現させること、終末期だけでなくもっと早い病期の患者に対してもがん病変の治療と同時に適用すべき多くの利点をもっているということで、さまざまな患者に適応すること、治療を行うことでQOLを大切にすることであると理解できた。

 

1) 倫理

研修プログラムの中に生命倫理があり、看護とどう関係があるのだろうと思いながら講義を受けた。すると看護する以前に知っておかなければならないことだと感じた。新人のとき先輩看護婦から「こんなことをしてはダメ」と怒られた場合、原因も分からないまま絶対ダメと思い込んでいた。そうなると原因が分からないため似たような間違いを繰り返し、応用ができないし、他者(患者、医療者)への説得力もない。また、原因を調べたり勉強しようとも思わなかった。つまり、私の頭には、価値に関わる判断+事実の認識→行為の選択ができていなかったと分かった。倫理の原則(患者によいことをする・患者に害を与えない・患者の自律を尊重する・正義)と、1]行為の目的(医療行為を通して行為の相手にできる限り大きな益をもたらすことを目指す)、2]行為の進め方(医療行為において行為の相手を人間として遇せよ)、3]他者への影響(行為がその相手ないし第三者にもたらす益と同等以上の害を第三者ないしその相手に及ぽすような医療行為はしない)を常に考えながら看護を行っていくことが重要であると理解できた。

 

2) 緩和医療

緩和医療の講義の中で、死のプロセスとは現実的になることという言葉を聞き、初めはどういう意味なのか理解できなかった。そんななか「患者の希望・期待などと現実のギャップが大きいとQOLは低下する。その期待の現実的修正をすることでQOLの向上をはかる」という言葉を聞き、患者の希望に応えなければならないと思っていた私にとって、希望を失わせていいのであろうかという違和感を感じた。実際にトイレに行けない患者がトイレに行きたいという希望でトイレに行くが、患者の苦痛は大きく希望がかなえばQOLが充実しているわけではないと感じた。無理にトイレに行くのではなく、患者の希望になるべく近くなるよう患者と話し合い、ポータブルトイレにするなど患者の状態に合った看護を考えていく必要があると感じた。

 

 

 

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