日本財団 図書館


様々な人たちとの出会いで得たもの

 

川崎市立井田病院

武見 綾子

 

はじめに

 

現在日本では4人に1人ががんで亡くなるという状況である。私が勤務している病棟でも多くの方ががんと闘っている。外科病棟では入院・手術・退院という流れが日々繰り返され、その中で私たち看護婦もケアを行っている。手術を受ける方を中心に慌ただしく日々が過ぎていくが、がんが再発し病棟で亡くなる方も多い。数人の終末期の方々と、担当看護婦として出会い関わりを持っていく中で、それまでは一般病棟でも緩和ケアはできると考えていたが果たしてそうなのか、慌ただしい環境の中でケアができているのか等疑問に思った。そのようなきっかけで緩和ケアについて考えていた時、緩和ケアナース養成研修の存在を知り、自分の疑問を解決することができるのではないかという思いで参加することとなった。

 

講義について

 

勤務している病院でも昨年緩和ケア病棟が開設されたが、私は緩和ケアについて知識がほとんどない状況で今回の研修に参加したため、講義の中にも初めて聴く知らない言葉もあった。そのため、他の研修生が当たり前のように交わしている会話にもうっかり入れないような状態で肩身が狭い気分だった。しかし、これをきっかけに新しい知識を仕入れれば良いという気持ちと、他の人と同じレベルで話がしたい、追いつきたいという気持ちから、講義はもちろん自分で多くの文献を読むことにも時間を使うことができた。講義は様々な先生方との出会いの場であった。特に印象的だったのは、「症状マネジメント」の内布先生、「家族援助の実際」の季羽先生、「精神症状」の内富先生の講義である。

内布先生はパワフルな語りにまず圧倒されたが、症状をマネジメントしていくという考えは自分の中で今までに考えたことがなかった。そして、症状マネジメントモデルという開発中であるその方法については、臨床で使えなければ意味がないということ、そのため無理に全てを導入しようとせず、できそうなところから行ってみて検討していくという方法で浸透させていきたいということであった。症状マネジメントの講義の中で特に考えさせられたのは、症状は主観的なものであるため、その人がその症状について存在すると言えば必ず存在するのだということである。当たり前なようだが、今までそのように意識していたかと考えると、自分は少しずれていたように思う。そして症状を紛らわし自分なりにコントロールしていくために工夫をしているということは、考えたことがなかった。よく、「痛いと言っていたけど、テレビを観て笑っていたから大したことないのではないか」等と考えたり話したりしていたことを思い出し、恥ずかしくなった。気を紛らわすことで少し症状が軽減するということを、体験的に知っている患者さんの工夫を理解していなかった。今後今までの私の考え方や行動が、知識を得たことから変化していくのではないかと考えている。「症状はその人が訴えるとおりに必ず存在する」ということを忘れずにいたい。そして先生の、臨床が大切、臨床で使いにくければそれはあまり良いものではないのだ、という言葉には大変勇気づけられた。できることから少しずつでも行ってみようと考えている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION