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「尊厳ある生」を支えて

 

千葉大学医学部付属病院

砂堀 真理子

 

はじめに

 

今回の研修は、急性期と慢性期が混同している大学病院において、どのような緩和ケアが提供できるのか、ハード面、ソフト面はもちろんのこと、緩和ケア全体について理解することであった。そのため研修課題を

1] 進行がん患者のQOLを高める看護援助

2] 疼痛コントロールとチームアプローチ

3] 進行がん患者を支える家族の援助

実習目的を

緩和ケアの実態を体験し、チームアプローチに必要な実践能力を習得する、とした。

講義、実習は内容が深く興味にあふれるものばかりでした。その中で、今まで自分の未熟さに気付かされたと同時に、経験に基づいたケアを理論的に導き出してくれました。その結果、これから職場においてどのような看護援助、チーム作りをすればよいのか方向性を見出すことができました。

 

研修の学び

 

1) 緩和ケアと看護婦の役割

今回の研修を受けるまで、緩和ケアとターミナルケアがどのように違うのか理解しておらず、緩和ケアはターミナルになった時に緩和を目的としたケアを提供するもので、緩和ケア病棟は安らかに“死”を迎える場所であると誤解していた。

WHOでは緩和ケアの基本的理念として:治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患をもつ患者に対して行われる積極的で全人的なケアであり、……最終目的は患者とその家族にとってできる良好なQOLを実現させることである、と唱えている。そして、今後増え続けるがん治療の在り方として、診断時から痛みの治療と緩和医療が必要で、病院では急性期と慢性期治療、緩和ケア病棟では看護・症状の緩和、家庭では生活と介護が相互に連携されることが必要だとされている。しかし、現状では緩和ケア病棟が57施設・1,031床のため、一般病院の中でも緩和ケアの3原則1]適切な症状マネジメント、2]コミュニケーション、3]家族への援助、をふまえたケアの提供が望ましい。だが、大学病院のように教育、研究を目的とした施設では、患者の価値観より医師の考えを優先することが多く、緩和医療についての関心、知識不足もうかがえる。

私はこのような中で、今、患者に何をしなければいけないのか、基本的な姿勢、目標を失いつつあった。研修、実習を通し、一般病院でも緩和ケアに近い看護を提供できるという確信が得られた。それは、“緩和ケア病棟だから特別のことをしているわけではない、当たり前のことをしている、死に向かってのプロセスは現実的修正を積み重ねていくことでQOLが向上する”と言われたことである。医療チームとして患者の権利を尊重しながら、苦痛を緩和するという役割をきちんと果たす基本的な姿勢が重要であると感じた。

 

2) チームアプローチとコミュニケーション・スキル

緩和医療が充実し、質の向上に結びつくかどうかの一つに、どのようなチームでアプローチするかということと、コミュニケーション・スキルを用いることができるかがあげられる。私が今まで体験したチームは医師と看護婦が主体で、自分達だけでどうにかしなければという思いが強かった。

 

 

 

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