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人間そのものをみつめるということ

 

前橋赤十字病院

反町 利恵

 

はじめに

 

学生時より、ターミナルケアに関心をもっており、その頃からそれらに関する本を読んできた。臨床で看護婦として働くようになってからは、ある医師、ある看護婦、そしてたくさんの患者さんとの関わりを通し、ターミナルケアやホスピスケアについて学び、考え実践してきた。しかし、終末期患者と関われば関わるほど様々な苦痛に対処しきれない自分の無力さを感じ、また歯痒さとやるせなさを覚え、本当にこれでよいのだろうかという疑問を抱くようになってきたのである。

私なりに築き上げてきた理念や理論をきちんと丁寧に振り返ることにより、さらに深みをましたものとして、自分のものにしたい。そして、緩和ケアの確実な知識・技術を身につけたい。これが今回の研修に参加する動機となったのである。

そして、研修課題として次の3項目をあげた。

○ 緩和ケアにおける倫理的諸問題へのアプローチ

○ コミュニケーションとカウンセリング

○ 進行がん患者のためのチームアプローチ

講義内容と実習内容を振り返ることにより、上記の課題について学んだことを報告する。

 

○ 緩和ケアにおける倫理的諸問題へのアプローチ

臨床倫理の原則

P1 [行為の目的]医療行為を通して、行為の相手(患者)にできる限り大きな益をもたらすことを目指せ

R1-1 相手の今後のQOLと余命との積をできる限り大にすることを目指せ

R1-2 相手が充実した人生を送ることを妨げるな

P2 [行為の進め方]医療行為において、行為の相手(患者)を人間として遇せよ

R2-1 相手と共同で医療行為をせよ

R2-2 相手の傍らにあれ

P3 [他者への影響]行為がその相手(ないし第三者)にもたらす益と同等以上の害を第三者(ないしその相手)に及ぼすような医療行為はするな

緩和ケアの倫理

現在を犠牲にしない。延命か縮命かを度外視して、ただ現在のQOLをできる限り高めることを目的として設定する。

緩和ケアにおける医療の進め方で、医療の目的の価値をどうおくか、医療の進め方をどうするかは緩和医療を行う上で倫理的にチェックする項目である。

 

告知の問題、病状説明時の患者不在、疼痛コントロールの不良、セデーションの問題など、あげればきりがないほど生命倫理に携わる問題がある。これらがなぜ倫理的に責められるのか。清水は「倫理的に責められるのは知識のなさや未熟さそのものではない。そうではなく、尊重すべき人間(患者)に向かっていい加減、慎重さに欠けた対応をし、専門家としての知識や技術をまっとうに発揮しなかったという姿勢が、そしてそれが原因となって相手に害を与える結果になってしまったことが責められているのである」1)と言っている。

 

 

 

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