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看護に対する新たな認識と自己の反省

 

医療法人社団日鋼記念病院

中嶋 望

 

はじめに

 

緩和ケア病棟開設に向けて、このコースを受講することになった。これまで緩和ケアというものに対して私の抱いていたイメージは、一般の病棟でしていることとは全く別のことをしなければならない、というものだった。しかし、研修が進むにつれ、本来どの患者に対しても行われるべき医療の原型であるというように認識が変わった。ここで学んだことは、今の病棟における看護の質を向上させるためにも、重要な事柄ばかりである。これまでの反省を含め、特に印象に残っている6点について、以下に述べる。

 

コミュニケーション・スキルについて

 

看護におけるコミュニケーション・スキルとは、患者の欲求を満たすために、それを引き出せることであり、専門的援助を提供し受ける治療的関係を意図的に作っていくことである。

患者の言動の裏にある本当の意味に気づいた時、ナースは患者を理解でき、適切な対応ができる。

例えば、寂しい時、相手にストレートにその気持ちをぶつけても、傷つけられるかもしれないと思ったら、あえて強がってみせたりすることがある。しかし、本当の思いと表面的な言動との間にギャップがあることは当然のことであり、それを引き受ける覚悟が必要である。そしてその覚悟を患者に伝えることが大切である。

また、身体の痛みを理解することも大切なコミュニケーションであり、痛いと訴えているのにそんなに痛いはずはないという反応で、患者を傷つけてはいけない。わかっていますよというのを伝えることが大切である。

以上が講義の主な内容だった。これまでの自分を振り返ると、患者の言動をまともに受け取り、怒ったり落ち込んだりしていたように思う。相手を理解してあげられず、傷つけてきたのは自分の方だったのに、自分が被害者のように思っていたことが多かったことを深く反省する。

また、人が人に接する時の態度には、評価的態度、解釈的態度、調査的態度、支持的態度、理解的態度、逃避的態度の6つの態度があるとのことだったが、私がこれまでとってきたのは、解釈的態度が多かったように思う。受容し共感することが大切と思いながらも、気がつくと、自分の解釈を元に患者に説明をしていることが多かった。そして、患者はわかってくれたものと思い込み、自己満足してきた。

こうして振り返ってみると、私はコミュニケーションが下手だった。コミュニケーションはスキルであることがよくわかった。

 

告知について

 

これはグループワークの題材にもあげ、現実の問題として最も関心の深い事柄だった。

告知をしなかったために、本人の意志を確認できず、残された時間を病院の中での辛い治療だけに費やし、人生を終えていく患者が日本には多い。その原因は、患者本人にどう話すかを家族に決めさせるシステムと、本人には真実を告げないでほしいと望む家族が多いことにあると思っていた。

しかし、告知を妨げているのは実は家族ではなく、両者を支える立場の医療者サイドの未熟さにあったことを知った。予想外の患者の反応が現れた時、どう関わったらよいのかわからない不安や恐怖が私達の中にあり、そこから逃げようとしていたのだ。

 

 

 

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