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患者と一緒に考えていくプロセスが大切

 

横浜市立大学医学部附属浦舟病院

鈴木 智子

 

はじめに

 

私は約3年前、ホスピス病棟で5か月間実務研修を経験した。その時に、知識不足からくるアセスメント能力不足を自覚、がん看護を通し人間理解を深めていくことの大切さを感じ、今回の研修受講の動機となった。約3週間、様々な講義を受けたことが臨床の場での実際はどのように行われているのかを結びつけて考えることができるよう、以下の目標を立て、実習に臨んだ。

 

実習目標

 

1 緩和ケア病棟の概要と役割を知る。

2 緩和ケア病棟での各チームの役割と、そのアプローチ方法を知る。

3 緩和ケア病棟での看護婦の役割を知る。

1] 症状マネジメントとケアの実際

2] コミュニケーションスキル(治療的環境、援助関係、患者の希望と現実の修正作業の実際)

3] 倫理的側面からみた個人尊重の在り方を知る。

4] 家族に対するケアの実際

意識レベル不安定な患者の、部屋での喫煙についての話し合いの中で、意志決定の支援、意志を尊重していくこと、患者を支える家族や付添婦との関係の中で、緩和ケア病棟での看護婦の役割について学んだことを述べていく。

経緯:当病院は、防災管理上部屋での喫煙は原則的には認めていない。患者、家族は決められた場所で喫煙するようオリエンテーションされている。ターミナル期になり移動困難となった場合は、誰か付き添いのもとに喫煙することは配慮される。今回、身内の代わりに付添婦が付き添っている状況で、意識レベル低下している患者の意志決定が、どうあることが望ましいのかを考えていく。

患者:女性、脳転移による左片麻痺、意識レベル不安定(JCSO〜1ケタ)。意識レベルの状態によっては、車椅子移動は介助で可能。甥がほぼ毎日面会に来るが、身の回りの世話は付添婦が行っている(入院1週間前からの関係、本人の希望により引き続き付き添っている)。喫煙が好き。

身体状態アセスメント:車椅子移動の疲労度を考えた時、身体症状の日内変動あるも、現段階では喫煙室でのタバコは可能と医療者は考えている。

今までの関わりの中で、付添婦の意見が患者の意志を変える場面があり、今後付添婦のベースで意見が左右される可能性が懸念されたため、医療者の関わりについて話し合った。最初に患者のことを考え、決定していく上で必要な情報として、「元気な頃の患者を知る」ことから初めてみることになった。まず看護婦は、付添婦に介入した。喫煙場所が決まっているが、患者については状態によって部屋で喫煙が可能と伝えた(付添婦が患者と一緒になって部屋で喫煙していることを注意する意図もあった)。そして、付添婦の目を通して、患者の入院前のことや今の状態をどうとらえているか、情報として得ていた。当然であるが、甥からも話はきている。

この場面から学んだことは、物事を決定していく上で、本人の意志がはっきりつかみにくい場合、臨床倫理上、「選択、決定していくために考える」その時、“理由”“根拠”“理屈”に基づいていくことが大切とある。患者をより深く理解することが、決定していくための根拠になることを実感した。話をしている看護婦の姿勢は、積極的に質問をするのではなく、相手の話を引き出すような言葉かけ、気持ち、考えが表現できるような質問のしかたであった。

 

 

 

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