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全員の心が一つになって

 

学校法人昭和大学藤が丘病院

多田 麻菜

 

はじめに

 

数年前に緩和ケアの存在を知り、末期がん患者以外でも必要な医療・ケアの考え方が根底にあることを感じた。そして緩和ケアの基本を身につけたいと考え、緩和ケア養成ナース研修に参加した。実習により授業で学んだ内容と緩和ケアの実際を統合し、現場においての緩和ケアはどのように行っていけるか考えることを目的として実習に臨んだ。

今回ピースハウスホスピスでの実習の機会を得て、2週間という短い期間ではあったが、緩和ケア・ホスピスケアの実際に触れ、緩和ケアにおいて最も大切な考え方について学ぶことができた。

 

実施と学び

 

1) チームアプローチの実際から

<ボランティア>

月曜から金曜まで15時のティータイムや、曜日替わりでアートプログラムがボランティアにより開かれている。七夕の日にはボランティアの方たちが中心となって七夕会が開かれ、他スタッフもゆとりを持って参加していた。患者さんが“あーすごく楽しかったー”と心からおっしゃっていた姿を見て、家庭的な雰囲気、ゆとりを持って医療者が参加できる環境を作り出すボランティアの存在は必要であると感じた。

また、アートプログラムではプログラムごとに専門的に担当のボランティアがいる。それによって患者さんが集中し、気が紛れたり楽しい時間を過ごす場が提供できている。その環境を維持することは難しいにもかかわらず、それらが無償で提供できていることに驚きを感じた。また、夜間泊まり込みボランティアをしている方がいたり、様々な施設でもボランティアをされており、活動の広さとバイタリティーにあふれていた。

ボランティアの役割の中には、直接患者さんに接しないこともある。残り少ない時間であるため一瞬一瞬を大切にし、良い環境を提供しようという全員の心が一つになっていると感じた。

ボランティアのお話から、患者さん・ボランティア同士の出会い・学びに感謝の気持ちでボランティアされていることを知り、頭が下がる思いがした。また、ボランティアの方々は様々な能力があり、もっとチームがそれを知り、それらを活用することがチームの力になることを学んだ。

ボランティアの教育は9項目・10回にわたり企画されている。その中で驚いたことは、症状緩和の講義も含まれており、患者がどういう状況にあるのかを理解するために行われていることだ。実際にはボランティアを病院内に導入することは難しい。ボランティアの教育や、ボランティアに対する医療スタッフへの教育と共に、医療スタッフがそれぞれの役割を自覚していることが必要になってくると思われる。導入されていることでより家庭らしい環境の提供ができたり、他の医療スタッフが役割意識を高められ、それぞれの専門性を高めていくことで質の高いケアが提供できると思われる。

<栄養士・調理師>

栄養士・調理師は「最後になるかもしれない一食に心を込めて」作られていた。食事が取りづらく、時間による変化が大きいターミナルの患者には、迅速に状況に合わせた対応が必要になる。時には患者の希望を知るため栄養士が患者と面接し、メニューを検討されている。直接栄養士が患者の希望を聞くことでより希望に近づけ、患者の満足度もアップする。当然のことであるが「治療目的の治療ではない」、と言われハッとした。

 

 

 

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