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その人らしさを支えて

 

千葉県がんセンター

草刈 聡子

 

はじめに

 

実習前の3週間で緩和ケアの基礎を学び、1つ1つの言葉の理解が浅く、自分の価値観や判断の中でケアしていたことに気が付いた。患者中心のケアと考えていたつもりが、患者理解もできていなかったと思う。

施設実習を行うにあたり、チームアプローチの実践を学ぶことを目的とし、具体的な目標に沿って実践した。2週間の施設実習を通して学んだことを報告する。

 

本論

 

1) 緩和ケアの実際を知る

上尾甦生病院のホスピスは、名称を「TCU(Total Care Unit)」とし、患者個人の人間性と意志を尊重している。施設に入所している患者は、院外から外来を経ての入院患者であり、ほとんどは前病院で予後の告知を受けていたり、治療がないからと退院を迫られた患者であった。自宅に帰るには、介護力の問題や症状に対する不安を持ち、安心して営める生活の場を求めて来院していた。病棟婦長は、「病棟の理念を理解してもらうには時間がかかった」と話していた。初診の患者や家族にも病棟を見学してもらい、この理念に基づいて病棟の説明が行われた。講義の中でも「緩和ケアを提供する者の捉え方で、患者や家族の捉え方も変わる」ことを学んだが、外来を見学し入院患者と家族の話を聞く中から、理念を持つことの必要性と相互理解を得るための努力が必要であることを学んだ。ケアを提供するスタッフと、受ける患者と家族の目的を一致させることは、お互いの満足感に繋がるのではないかと考えた。

チームのあり方として、「チームケアは家族を含めたそれぞれのメンバーが、患者さんのその人らしさを支えるための情報を共有し合い、お互いに対等な立場で関わることによって、うまく機能する」1)と言われている。そのためには、医師・看護婦・コメディカルが同一項に記入するカルテも必要であることが、共通認識されて活用されていた。プライマリーナースは、ケアプランの責任者であり患者と家族の相談の窓口でもあるが、「全て自分が行う」という気負いはない。週に1回行われるカンファレンスでは、ケアプランが見直され、情報収集においても「患者と家族の話したい時は、時間帯や状態によって様々であり、その時にいるスタッフが聞いた情報を共有すれば良い」と考えられていた。個人の考えで良いケアを提供したとしても、他のスタッフが同様にケアできなければ、質の高いケアを提供したことにはならない。24時間患者と家族が生活していることを理解し、個人の限界を知ることが必要であることを学んだ。終末期の患者と家族の問題は、今まで生きてきた過程の中での問題が凝集され、解決できないことも多い。デスカンファレンスを多くのチームメンバーで行うことは、自分達の限界や新たな知見を得るためにも必要であると考えた。

看護婦の教育についてマニュアルは作成されているが、目標に沿った評価をするのでなく、お互いの目安として活用されている。個人の価値観の多様性が言われる中、終末期ケアにおいては患者と家族の個性を尊重し、主体性を引き出すことが必要と考えられる。実習を通して、カンファレンスに参加したり様々なスタッフの話を聞く中から、ケア提供者の個性を尊重することは、患者と家族の個性を理解する上でも必要であると考えられた。

 

 

 

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