真実を患者に伝えて本当の支えを
群馬県立がんセンター
布施 裕子
はじめに
私の勤務する病院は県立のがん専門病院で、地域のがん医療に貢献している。病院建物の老朽化が目立ち、平成13年、建てかえることとなった。その際、緩和ケア病棟も同時に建設することが決められた。私は以前より緩和ケアに関心があり、この研修の受講を希望し、参加できることとなった。しかし、緩和ケアに関する講義を受けていくうち、様々な疑問を感じてきた。例えば、輸液、輸血の問題、腹腔穿刺は進行がん患者にとって低蛋白血症を増強させるという悪循環を繰り返すため、少量しか行わない等である。私は、緩和ケア病棟入院料の1日3万8千円という定額制から考えると、良心的な医療を行わなければ、粗診粗療になりかねないという危機感さえ感じた。しかし、今回の実習を通し、疑問が解消でき、緩和ケアの考え方を受け入れることができた。今回、実習施設での緩和医療の実際と実習を通して学んだことについて報告する。
実習の目的
私は実習するにあたり、次の目的、目標を立てた。
目的:研修での学びを統合し、学習施設での看護の実際を通して、緩和ケアに対しての知識、技術を深めることができる。
目標:
1. 緩和ケアの実際を知る。
1) 施設の概要(設置主体、理念、歴史)を理解し、その中でのホスピスの役割を理解する。
2) ホスピスにおけるインフォームド・コンセントのあり方を知る。
3) 家族への援助、特に遺族ケアの実際について知り、ホスピスにおける家族支援について学ぶ。
4) 他職種との協働の実際を知り、その中での看護婦の役割を理解する。
5) 症状マネジメントの実際を学ぶ。
6) 進行がん患者の心理的特徴とそのアプローチについて学ぶ。
7) ホスピスにおける倫理的問題とその対応を知る。
2. 自分の行ってきた看護を振り返ることができる。
3. ホスピスでの看護を通して、自分の人生観、死生観を改めて考えることができる。
実習を通して学んだこと
1) 施設の概要
1973年、ピースハウスホスピスの母体であるライフ・プランニング・センターは、一人ひとりに与えられた健康をより健全に保ち、充実した人生が送られるように、目標をかかげ設立された。その中の活動の一環として、日本で初めて病院から完全に独立したホスピスを、富士山を間近に望む神奈川県平塚市郊外ゴルフ場敷地内に建設した。病床数22床、そこに入院される患者さんの入院目的は1]痛み、その他の症状マネジメント、2]レスパイトケア、3]ターミナルケア、4]入院体験である。患者さんは自然に恵まれた療養環境、医療スタッフの理念に基づいたケア、ボランティアの方々などの支援により、より家庭的雰囲気の中で、療養生活を送っている。