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毎日が驚きと感動の連続

 

医療法人社団日鋼記念病院

中嶋 望

 

はじめに

 

2週間の施設実習を通して、普段体験できないことを体験し、講義だけではわからない様々なことを学んだ。それは、緩和ケア病棟開設に向けての参考になったばかりでなく、医療者としてのこれまでの自分のあり方を振り返る良い機会ともなった。ここでの数々の貴重な体験から学んだことを、以下にまとめる。

 

実習を通して学んだこと

 

1週目は、ボランティアと看護助手を体験させてもらった。このうち、初めての体験であるボランティアを通して学んだことについて述べたい。ここで最初に感じたことは、自分には普段いかに配慮が欠けているかということである。今時の若者に比べたら気のつく方だとは思っているが、ボランティアの方々の実に細かな気配りを見ていると、やろうと思えばできることは際限なくあると思った。

でも普段はなかなかそれに気づくことができない。その一因として、我々は、患者に気を配るよりスタッフの眼を気にして働いていることの方が多いことが考えられる。特に忙しい病棟ほど、テキパキと速く仕事をこなすナースが優秀なナースとされる傾向があるため、細かな気配りが忘れがちになっているように思う。つまり、スタッフの評価を気にするあまり、患者のケアに集中できなくなってしまっているということも実際には多いのではないだろうか。

また、これまで自分がしてこなかったのは、気づかなかったためばかりではなく、そこまでやる必要性を感じてこなかったためもある。本当はしてあげたいのだけれと、忙しくてそこまで手がまわらなかったのではなく、時間があってもやらなかった。つまり、医療者としての専門性を発揮できる仕事はするが、誰にでもできることは積極的にする必要はないと考えていたのだ。しかし、その誰にでもできることこそ大切なのだということが、よくわかった。それに、誰にでもできると思っているなら、それすらやらないのは人間として恥ずかしいことではないだろうか?この考えを変えない限り、他職種と協働していくことはできないと思った。ボランティアに専門的資格を持っている人を採用していない理由の一つに、こういったこともあるのかもしれない。仕事を選ばず、どんなことでも嫌がらずにする無償の奉仕こそボランティアの精神であり、我々医療者にもこの精神は必要不可欠なものであることを感じた。

2週目は、ナースに付いて看護の実際を学んだ。また、回診や外来の見学を通して、ドクターが患者にどのように関わっているかを知ることができた。

ここでは、普段我々が行っていること、見ていることとは相当かけ離れていることが行われていた。その中で、印象に残っている幾つかのことについて述べてみたい。

まず最初にセデーションについてであるが、胃チューブを交換する時にも使われていることを知り、驚いたが納得できた。我々の病棟では、強い痛みを伴う検査の時に使うことはあっても、処置の時にはロカール程度だった。考えてみれば同じことなのに、そういう発想ができなかった。保険点数の問題から誰にでも使えるものではないのかもしれないが、覚えておきたい。

 

 

 

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