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特に1997年は価格差が1バーレル(159リットル)当り3ドル程度まで広がった。原油価格はLNG・石炭など他のエネルギー源の価格決定にも非常に大きく影響していることを考えると、原油価格の相対的な割高感は単に石油産業だけの問題ではない。因みにこの3ドル格差にアジアの石油需要量を乗ずると年間90億$程度となるが、イラク危機の時に日本が支払った軍事費用と同程度の規模となっている。

 

2.3.:1997年半ばに起こったアジアの通貨危機は一時的な石油需要の減退をもたらし、一方製油所の建設投資計画に長期の停滞をきたしつつある。2000年以降で回復が予想される石油需要に対して精製能力の整備が追いつかず、中国、アセアンなど域内における石油需給ギャップが拡大する可能性が高い。この需給ギャップを埋めることができる選択枝として考えられるのは、1] 域内・域外からの既存製油所の余力を利用した製品輸入の拡大、2] 国内参入条件の整備に基づく外資導入による製油所の新・増設である。2000年以降の石油需要増大に対して、既存製油所に余力を持つ韓国と日本にとっては、その供給を行う大きなチャンスが訪れる可能性がある。

 

3:日韓提携オプション検討の必要性

 

3.1.:韓国の石油産業が直面している課題

 

3.1.1.:通貨危機の影響による主な石油産業の変化を整理すると、1] 石油製品需要の減少(98年の1〜4月の韓国の石油需要は97年同期対比16%程度減少している。) 2] 製油所稼働率の下落 3] 石油会社の収益力および資金力の悪化等が挙げられる。この結果、1] 製油所設備投資の延期および取り消し 2] 石油産業の規制緩和スケジュールの短縮(エネルギー安定供給から外国資本投資の誘致とエネルギー効率の追求へと、韓国政府が基本方針を変更) 3] 外国資本による既存の石油会社の買収および資本参加が積極的に行われつつある。

 

3.1.2.:韓国の製油所は、96年に大規模な原油処理装置の新設を実施した。今後10年間、大きな輸出能力を保持することとなる。設備面の強みと弱みを見ると、最も強みを発揮しているのは、原油処理装置の規模である(図-2)。すなわち、SKは1つの製油所の規模が80万B/D以上で世界で最も大きい。一番小さいHannHwaも28万B/Dの規模で日本やシンガポールの最大規模の製油所よりさらに大きい。また、原油処理装置1基当たりの規模も日本に比べて相当大きく、日本の製油所の1基当たり平均10万B/Dの1.5倍になっている。

原油処理装置能力の圧倒的強さに比べると、2次設備はそれほど充実しておらず、ガソリン、灯・軽油に付いては国内需要を満たす程度のものになっている(図-3)。2次設備の中で最も弱い部門は重油に対する脱硫設備であり、現在の脱硫設備だけでは内需の50%程度を満たすこともできない。毎年低硫黄原油の処理あるいは低硫黄重油の輸入によって必要な需要を満たしている。この点が日本と大きく異なっている。

 

 

 

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