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また、第88条でも「公海は平和目的のために留保される」と規定しているが、海軍の行動それ自体を禁止しているものではないと解されている。

その他、公海上における船舶に対しては、旗国の排他的管轄権が認められるが、例外として公海警察の制度と言われる特別の権限が認められている。即ち次の場合には、軍艦の私船に対する臨検が認められている。この場合の、軍艦の権限は、軍用機、資格のある政府の船舶及び航空機(例えば海上保安庁の巡視船・航空機等)にも認められている。

1]海賊行為を行っている船舶 2]奴隷取引に従事している船舶 3]無許可放送を実施している船舶 4]無国籍船舶 5]国籍を偽装している船舶

 

伝統的な海洋利用の主たるものは、輸送手段としての利用である。大陸横断鉄道や渡洋航空機の発達にも拘わらず、海は依然として国際的な輸送を支配している。戦後日本の目覚ましい経済発展も、海上輸送に負うところが極めて大きい。「THE FUTURE OF SEA POWER (ERIC GROVE 1990)」によれば、容積にして国際貿易の80%、重量にして95%が海上輸送に依存している。

これを更に渡洋貿易に限って見れば、重量にして99.5%以上が海上輸送、0.5%以下が航空輸送によって運ばれている。これは1986年英国の国会に提出された報告であるが、日本の場合を見ても、1991年の輸出入貿易量約7億9千万トンの内、航空輸送が0.2%、海上輸送が99.8%と言う統計がある(「冷戦後の海上自衛隊」世界の艦船1995.1)。付加価値の高いものを迅速に輸送できる航空機に対し、日数が掛かっても大量の物資を安価に運べる海上輸送の使命は依然として大きいものがあるのである。

その意味で、今回の国連海洋法条約において、海洋の自由使用の精神が基本的に生かされたことは、歓迎すべきことであり、当然のこととも言える。しかし、領海の幅12海里、群島水域・排他的経済水域等にみられるように、沿岸国の主権や管轄権の拡大が図られており、航行の自由が制限され易い環境になっていることも事実である。

 

人類は経済活動と同様に海洋を軍事活動・戦争に利用してきた。戦場に或いは戦場にアクセスするためのルートとして、世界の三分の二を占める海洋は、有効な媒体であったし、現在もそうである。海洋は地球全体に広がっており、海軍は公海・排他的経済水域の自由航行を最大限に活用して、情報収集活動、プレゼンス、輸送、陸上への兵力投入、シーコントロール等各種の作戦や行動を行うことが出来る。しかも行動に柔軟性・機動性があり、海の水と広さが兵力の展開、部隊の行動を隠蔽してくれる。

 

 

 

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