日本財団 図書館


言い換えれば、外国船舶は領海内に入らない限り、全く自由に通航が許される。但し、先に述べたように、今回の改正で「直線基線」を採用したので、公海又は排他的経済水域の部分が以前より狭くなっている水域がある。

「通過通航」は、公海(又は排他的経済水域)から他の公海(又は排他的経済水域)に領海たる国際海峡を通峡する場合に適用される制度であり、領海内の無害通航とは法的性格を異にする。通過通航には1]航空機を含むこと、2]潜水船の浮上航行を要求されないこと、3]沿岸国の都合により通航が停止されないこと、4]軍艦、軍用機についても認められていることなど無害通航より自由度が広いという特徴を有している。

海洋国たるわが国の立場から見れば、他国の領海幅は小さく、海が出来るだけ広く、自由に使える方が国益に適う。しかし、わが国の領土的保全を確保する立場から見れば、主権の及ぶ範囲は広い方が有利であり、従って領海幅は広くとるに越したことはない。

わが国は、1870年(明治3年)の普仏戦争に際し、交戦国の戦闘行為禁止と中立義務履行のために領海を明確化する必要が生じ、太政官布告により領海3海里と定めた。これ以降わが国は戦前・戦後を通じて、領海幅3海里を維持してきた。しかし、世界の趨勢が領海幅を広げる方向に向かってきたことや、沿岸漁業の保護の観点から、わが国は1977年(昭和52年)に領海を12海里に変更する領海法を新たに制定、施行した。

この77年の領海法は、領海幅12海里を基本としながらも、先に述べたように津軽海峡等五つの国際海峡については、「特定海域」として領海3海里のままとした。この点は、領海法を改正・施行したこの度の「領海及び接続水域に関する法律」でも全く同じである。政府部内には、この特定海域の領海幅を12海里に広げるべきとの意見もあって検討されたようだが、対外的な配慮と直線基線を採用することによって改善されるとして、3海里のままとされた経緯がある。

以上のことから、津軽海峡等5海峡については、中央部に排他的経済水域が残っているため、公海部分と同様、潜水艦を含め艦船は自由通航、軍用機を含む航空機も自由な飛行が許されることになる。だが、ここでもし領海幅12海里として、間に排他的経済水域がなく、海峡全域を領海にした場合は、国際海峡として通過通航権を他国の船舶(潜水船を含む)及び航空機に認めなければならなくなる。その時外国の船舶は、海峡部分の航行可能な水域の何処でも通航でき、航空機も陸地即ち領土の上の空域に入らない限り、何処でも飛行できることになってしまう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION