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安定した豊かな社会生活と、持続的な発展を維持し、さらには、資源を巡っての国家間の紛争、あるいは環境難民等を発生させないための予防的な安全保障措置が講じられなければならない。

 

(2) 海洋資源・環境安全保障

 

資源・環境問題は海洋にも及んでいる。陸上の耕地の開拓は、19世紀の後半には既に限界に達したとされており、以降は肥料や品種の改良によって農業生産を伸ばしてきたが、今後の地球人口の増加に応じた農作物増産の可能性については、多くの予測が悲観的である。

人ロ増加に加えて、食生活の向上が海洋生物資源の危機を招いている。

海から採れる魚介類は、世界のタンパク源の約1/4を供給している。日本などではそのまま食用となるが、世界の全漁獲量の1/3はブタやニワトリ等の畜産用の飼料あるいは、養殖魚の餌となっている。豚肉1Kgに対して飼料6Kgが、鳥肉だと2kgが必要とされている。1Kgの養殖ウナギは6kgのイワシを必要とする。養殖ハマチではそれが10Kgとなる。

中国では、経済発展と食生活の向上から食肉の生産が増大している。1985年に約50万トンであった牛肉生産は、1995年には5倍の250万トンに達している。豚肉の生産はその10倍である。もともと日本への輸出用であった中国産養殖ウナギは、中国国内での消費が急増したため、生産が急激に伸びている。

このような食生活の変化を背景にして、魚介類の需要が伸びているにも拘らず、世界の漁獲高は落ち込みをみせている。世界の総漁獲量は、1945年で2000万トンほどであったが、1960年代後半以降、年率6%以上の加速度的な伸びを示し、1989年に1億トンに達したが、それ以降は、8500-9000万トンと低迷している。世界の15の主要漁業海域のうち13の海域で水揚げが落ち込んでいるためである。第?T部で述べたように、国連食糧農業機関の調査では、世界の持続可能な漁獲量は1億トンとされている。既に限界を通り越して枯渇に向かっているとも考えられる。北洋から北大西洋にかけてのタラ・ベルトで、無限と思われていたタラの漁獲量が激減している。南シナ海の漁業は枯渇状態に近く、インドネシアから南太平洋にかけての海域も枯渇危険海域となっている。

海洋資源の枯渇は“乱獲”と“環境破壊”によってもたらされている。

“乱獲”は近代化された漁業技術による“一網打尽”漁法と漁船用冷凍保存設備の普及によって生じている。“乱獲”は漁業資源の減少に直接的に作用しているが、“一網打尽”されるのは商品価値の高い特定の魚種であるため、それによって食物連鎖に影響が及んで海洋生態系を変化させており、それが結果的にさらなる漁業資源の減少をまねいているのである。商品価値の低い魚種は海上投棄されており、それは全漁獲量の20-30%に及ぶといわれている。投棄された魚は腐敗して漂い、それがまた漁業資源に悪影響を及ぼす。

海洋の“環境破壊”は、汚染、開発によるものが大きい。汚染は、船舶起因、と陸上・河川起因とがある。

 

 

 

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