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僕が言っているのは、権利の体系で争っても有意義ではない、だから一度義務の体系で何ができるのかと発想を変えてみたらどうかということです。そうしたら大変な義務を負うわけでしょう。だから中国だって、義務を負えなければ意味がない。そうするとある領土の領有の問題をいちおう将来的な問題に棚上げして、もしもダブった水域があるのなら、そこは共同管理にして義務を履行して行こうじゃないかという発想ができないかと提案しています。

 

44:領土紛争で線引き出来なければ共同管理水域を設定するしかはない

 

共同管理水域を作ったのが、竹島の漁業の共同管理水域でしょう。それしかないからしょうがないけれど、竹島そのものの領有権争いは将来の世代に受け渡す。ただし、日本と韓国の主張がダブったところを共同管理水域として、義務を履行すべきだという発想になって共同管理水域ができているわけです。したがって、領土紛争があって線引きが出来ないのであれば、共同管理水域を設定して義務を履行していくしかいま残されている道はない。みんな世界では、そういう方向に行っている。

俺たちはこういう権利があるといって権利の側面だけで争っているから解決しないんですが、義務を履行する関係を入れれば、共同責任管理ができるのではないかと言われているわけで、その方向で話し合って行く必要がある。それについては、中国の海軍の方は駄目らしいけれど、国家海洋局のほうはよく理解しています。個人的にも私は何回も話したことがあるし、国家海洋局に呼ばれて、私は約十年間海洋法の講義を中国でやってきて、私の教え子だけでも何百人もいます。

 

45:台湾問題:「人類のものを討議するのに、なんで国家だけでやるの?」

 

川村 ありがとうございました。ほかにご質問ございますか。

秋元 たとえば中国のように、台湾は中国の一部だという主張をして、台湾を国家として認めない。国連でもそれを認めている状況です。こういう状況下で、台湾はどういう適用を受けるんでしょうか。

布施 台湾の場合はいわゆる領域主権国家ではないから、条約対象にならない。だから条約加入もない。ただこれは国際海洋法条約の審議の過程で問題になったことなんですが、おかしかったのは、国際海洋法条約の審議をしたときには、初めは国家だけに招待状を出したんです。そうしたら「人類のものを討議するのに、なんで国家だけなの」ということになって、国家でない、PLOとか台湾にも招待状を出したんです。つまり人類であれば、それが国家にとらわれなくてもいいということなんです。国家でない国家にも招待状を出して、正式に討論に参加してもらった。ただ、最後の段階で批准、署名ということになると、PLOも投票権は認められなかったんですけれど。

そういう経過から、台湾は独自に自分の排他的経済水域を設定していますし、中国はそれを追認して、自分の国の排他的経済水域と考えているわけです。だから沖縄の近くまで台湾の排他的経済水域は来ているでしょう。それは同時に中国の側から言えば、中国の一部の省である台湾の排他的経済水域ということで、中国の排他的経済水域だと主張している。実際には、台湾は中国の一部として、国連海洋法条約に基づいて、同じような役割をしています。

 

 

 

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