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ところが、1976年に至りまして、アメリカが裏切った。突然に「漁業水域200カイリ」を作ったので日本は寝耳に水でした。そのときアメリカが何と言ったか。「いまやこれは慣習法になっているからね」と言ったのです。まだ反対していた日本はびっくりしました。ついさっきまでスクラム組んで一所懸命頑張っていたアメリカに「これはすでに慣習法だ」と言い切られ、逃げられたわけですから。

そういう意味で、慣習法の形成に国力がある程度関係が「ある」と思わざるを得ない。

ところが、「力さえあれば、全て慣習法になり一般国際法になるのか」というと、そうでもない。私もそう思うし、マクドゥーガル教授もそう言ってますが、やはり無理は通らない。無理な慣習法、無理な国際法、無理なポリシーを押しつける国際法、これらは遅かれ早かれ崩れていく。そのような立場をとっているんです。

 

42:世界共通の利益に合致することを力のある国が主張すれば...

 

ですから2つの条件がそろわないと駄目だということです。第1は、世界の国々の共通利益に合致すること。第2は、そう言っている国に力があることです。この両方の条件が整わないと駄目なのです。

例えば、日本のような国力がない国がなんぼ正論を吐いても誰も聞いてくれない。尖閣や竹島について、日本がなんぼいいことを言っても誰も聞いてくれない。その限りにおいては、国力が必要だというところで落ち着かざるを得ない。

 

43:守りぬく力をデモンストレートする必要がある

 

現実的な問題について、最後にコメントしましたが、わが国が今後資源を守ったり、島を守ったりしようとするならば、せめてそれを守りぬく力をデモンストレートする必要があるのではないかと思います。

例えば尖閣列島などは、今日の第6回研究委員会での平松先生のお話ではございませんが、1回占拠されたら日本には取り返す力がありませんね。取り返すシステムができあがっていないという気がいたします。その政策は、いわゆるありきたりのナショナリスティックなポリシーでなく、非常に沈殿された法政策として伝えられて然るべきなんです(拍手)。

 

44:米新政権は政策優先か?

 

岡崎 明快で本当に勉強になりました。ありがとうごさいました。ポリシーとローの関係ですが、ご参考までに申しますと、「フォーリン・アフェアーズ」の最新号に、今度ブッシュ政権のチーフ・スタッフになるのではないかといわれるコンドレッサ・ライスが論文を書いています。その人が同じようなことを言っているという話なのですが、ノームズ(国際法でいう規範)とアメリカのナショナル・インタレストを比較して、ナショナル・インタレストのほうが大事だとはっきり書いています。アメリカがナショナル・インタレストを追求すると、自然に世界が民主的になって、市場経済になって、平和になるんだという話です。

 

 

 

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