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さて、このペースで委員長に続けてやっていただきますとお疲れになりますので、この辺で、高瀬先生からコメントを4、5分いただければと思います。

 

10:「ついにシーマンシップは地に墜ちたか」

 

高瀬 ご紹介あずかりました高瀬でございます。急になにかと言われても、ということですが、私が半年前にお話をしたあとにもいろいろな事件が起こっておりますので、その話でもさせていただきます。

12月の終わり頃、フランス沖でエリカという船が真っ二つに折れまして、油が相当流れてフランスの海岸をかなり汚染しています。これはトータルフィナーというフランスの石油会社がチャーターした船で、26年ぐらいたったボロボロの船なんです。これが真っ二つに折れて、たくさんの海の鳥も死んでしまったというので、ヨーロッパの新聞ではかなり詳しく報道されていますが、日本の新聞にはあまり出ていません。こういうことが毎日起こっているわけです。

もうひとつ、半年前に海賊の話をちょっとしたような気がするんですが、その話をしたあとで、日本の船員が乗ったアロンドラ・レインボー号という船が海賊にやられました。これが非常に悲しいことに、船から降ろされた船員はライフボートに移されてアンダマン海を漂流していたんです。その時のことですが、助かった船員らの証言によりますと、日本の新聞にはこれもあまり詳しく出ていなかったんですが、6隻ぐらいの船が沖合を航行していった。ミラーで太陽を反射させて信号を送るとか、発煙筒を打ち上げるなどいろいろなことをやってみたんですが、それに全部の船が気がついているにもかかわらず6隻とも知らん顔をして沖合を過ぎていってしまったというのです。最後には結局タイの漁船に助けてもらったようですが、「ついにシーマンシップは地に墜ちたか」というのが、これがイギリスの「フェアプレー」という古い海運雑誌のコメントでありました。

シーマンシップとは何かと言うと、仲間が遭難しているときには、どんな危険があっても救いに行くことなんです。海軍の場合は、やっつけた相手の軍艦や撃沈した相手の軍艦の乗組員も助ける。返り討ちにあうかも知れない危険も顧みずに助けに行くのがシーマンシップの伝統だったはずですが、「その伝統も失われてしまったか」という慨嘆の論説が出ていました。

簡単至極なつまらない話ですけれども、それほど世界の海運が変わってしまっているということなのではないかということをこのところ強く感じております。

 

11:「シーレーンさえ守られていればいいんだ」という商売人の立場

 

それと、今日の平松茂雄先生の講義(第6回研究委員会)にも、ちょっと話が出ましたが、シーレーンの保護については、われわれ海運業者にとってはスムーズに船が動いている限りは、あまり考えないでいい話なんです。

 

 

 

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