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8:わが国の海運の潜在的な問題点

 

わが国の海運の潜在的な問題点として、経済上・安保上の弱点が表面化してきました。高瀬さんからは「いったん何かあったような場合に、日本の船を外国の船員にまかせたままで本当にいいんですか」という指摘がありました。

高瀬さんからは「日本港湾の競争力がだんだんなくなってきていますよ。ミラーポート化しています。例えば現在日本の港湾ですと朝8時から4時までしか働かないですね。夜間の作業はしませんね。これでいいんですか? こういうことでは外国の港との競争に負けてしまいますよ。」という指摘があり、そして、「その結果、ハブポートとしての機能が例えば韓国に移ったような場合にそれでいいんですか?」という指摘がありました。「そうなると、例えば貨物はだいたい三日ぐらい余分な時間とコストがかかることになる」というお話でした。

それから港湾の問題ですが、かつて、コンテナ船が登場したときに、急遽日本は受け入れの能力をつけたのですが、その後、コンテナ船がだんだん大きくなった。現在の標準コンテナ船に対応できるのは水深15mですね。そんな港は日本ではあまりないですよ。こういう問題点の指摘をいただきました。目が覚める思いで聞いたのを覚えております。

 

9:高瀬先生のお話のアウトライン

 

小川 川村委員長からアウトラインについてご説明がありましたが、お手元にお配りした議事録を見ますと、高瀬先生のお話は次のようでした。

 

1:海運問題の性格と日本における研究

2:海運政策の変遷

2.1:港軍の予備船隊(Sea Power)としての育成保護(戦前)

2次的に通商政策のツール、国威発揚

2.2:高度経済成長の隘路解消、国際収支改善の手段(戦後)

外航船隊整備計画

2.3:石油危機による船腹大幅過剰の表面化

先進国船員の競争力喪失、個別海運企業救済策へ転進

3:海運秩序の無政府化

3.1:便宜置籍船の主流化・オフ・ショア置籍制度

管海官庁を持たない無責任体制の旗国→State Control

市場経済至上主義による規律の喪失

Sub Standard船の跳梁

先進国での伝統的海技伝承の喪失

3.2:地球環境問題への悪影響

原油の大量輸送、船員の質の低下、米国民の過剰反応と孤立主義

3.3:東南アジア、極東方面での海賊行為の凶暴化

4:わが国海運の潜在的問題点

4.1:経済的安全保障上の弱点の表面化

・傭兵的船員集団で緊急事態に備えうるか?

4.2:日本港湾の競争力喪失、日本港湾のFeeder Port化

質疑応答

 

 

 

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