日本財団 図書館


□観光まちづくりとは

いくつかの先進的な地域では、このような問題意識を背景として、一丸となって、まちづくりに取り組んでいます。

現在、国内有数の観光地として有名なある温泉地では、まちの衰退の危機を背景として、数名の住民が、誇りをもって住めるまちの実現に立ち上がりました。はじめのうちは手探りで進めていたものの、徐々に、様々な団体や個人を巻き込み、自分たちの資源を最大限に活用したまちづくりを進めました。その結果、現在では来訪者と地域住民が満足し、資源の劣化などの問題も最小限におさえるという高い次元の目標を達成しつつあります。

 

ここでは、こうした背景を踏まえて、望ましい地域づくりのあり方として「地域が主体となって、自然、文化、歴史、産業など、地域のあらゆる資源を生かすことによって、交流を振興し、活力あふれるまちを実現するための活動」のことを「観光まちづくり」と呼ぶことにします。

 

□一般的な観光開発との違い

これまでの一般的な観光開発では、集客力の向上や産業振興が優先されることが多く、地域の人々が大切にしている「地域らしさ」や定住環境への影響が考慮されることは少なかったといえます。その結果、観光振興が進むにつれて、集客を重視する観光関係者と、地域のよさの継承や住まいの環境を重視する住民との対立が問題を招いているケースがしばしばみられます。

また、古都など地域によっては資源の保全のみが重視された結果、せっかく資源があっても、住民の生活の利便性が犠牲にされたり、関心を持つ人であってもみる機会が提供されなかったりするケースがみられます。

一方、来訪者の目からみれば、せっかく資源があっても、その魅力が引き出されていなかったり、住民自身が魅力を理解せず、誇りをもっていなかったりする地域は、魅力に乏しく映ります。資源を生かして地域を活性化させるためには、来訪者が満足感をもつ地域づくりも重要です。

観光まちづくりは、地域が主体となった総合的なまちづくりとして観光振興に取り組むことによって、資源、地域の定住環境、来訪者の満足度、それぞれの側面で問題が生じないようにバランスをとりつつ資源を活用し、地域全体の持続的な発展をめざす取り組みということができます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION